安倍晋三内閣の発足とともに、連日、株式市場の活況が報じられている。とりわけ4月4日、日銀の黒田東彦総裁が発表した「異次元緩和」に対する市場の反応は大きかった。民主党政権時代の沈滞ムードを一変させたのだから、安倍首相の功績は素直に認めるべきだろう。しかしその一方で、「副作用が大きい」「日本経済は崩壊する」と警告する経済学者も少なくない。
個人的には、リフレ政策(金融緩和でデフレを止めようとする政策)には懐疑的だ。マネーを供給するだけですべてうまくいくのなら、誰も苦労はしない。
「日本はアメリカのように金融緩和しなかったからデフレ不況のままだ」という意見もあるが、それはどうか。アメリカと日本とでは、企業業績が悪化したときの対処法が異なる。
アメリカの企業は景気が悪くなるとリストラをし、供給を減らす。人件費も減るので早い段階で利益が出始め、株価も上がる。その代わり、失業率は高くなる。
一方、日本企業はリストラをせずにボーナスを下げる。給料が減っても従業員は働くから生産量は変わらない。結果、供給過剰でデフレになる。企業は利益を出せないので株価も上がらない。その代わり失業率は低いままだ。
根本的な経済システムの違いを論ぜず、「刷ったお金の量ですべてが決まる」といった議論は、いささか雑なのではないか。いずれにせよ、日銀は「2年で結果を出す」と言っているのだから、もうすぐ答えは出るだろう。
成長戦略の重要性を叫ぶ人もいるが、それでうまくいく時代は1970年代で終わった。80年代以降、国が成長戦略を描いたものを振り返れば、何ひとつ成功していないことがわかる。いま海外で影響力があるのは「アニメ」と「日本食」だが、どちらも産業政策から無視されていた分野だ。