今春も、会社員の7割は「望み薄」

▼2015年の中小企業のベアはマチマチ
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ベアはあっても、たった500円

それでは、今春、2015年の中小企業のベアはどうなるだろうか? 私は、次のように業種・企業規模により、×に区分されると考えている。

 自動車産業の会社。ここは円安メリットを享受している。だが、メリットを満身に受けているのは大手メーカーだけであり、下請けには回らない。忙しくても儲からない、いってみれば多忙貧乏である。

この自動車産業の中小企業、つまり下請けの2014年の賃上げは、労組のある会社でもベアが数百円だった。2015年については、わずかに増額されて500円以上1000円以内のところが多くなるだろうと想像している。

× 自動車産業以外の会社。ここは円安デメリットを受けている場合が多い。食品、繊維などは、中国で生産したものを仕入れている場合が多いので、円安が経営に大きな打撃になった。2014年のベアはほとんどのところがなかったが、2015年も基本はベアナシだと想像する。業績がよほど良い会社のみベアを実施できるだろう。

こうした傾向は、東海地方に限らず全国的にいえるものだろう。

つまり、日本の企業数の99.7%、雇用の約7割を占める中小企業(約430万社)は、輸出業務が多く円安を享受できる大手企業の社員はベアありだが、逆に、輸入業務が多く円安がデメリットとなる企業はベアなし、と明暗が分かれるになるにちがいない。要するに、多くの社員は今春も残念ながら「望み薄」と思われる。

▼新聞報道にご注意を!

とはいえ、新聞をみていると、この時期ベアに関する記事が目立つ。「中小企業でも○割がベア」などという見出しが目に入ってくる。だが、そのような記事は要注意である。「根拠不明」とまでは言えないが、その手の情報はどんな調査内容なのか、しっかり吟味しなければならない。

新聞記者の世界では“発表モノ”という言葉がある。役所とか大手企業が発表する内容を記事にすることだ。イマドキの経済記事は9割以上が発表モノである。発表モノというのは、発表する側の意図が隠されている。わざわざ発表するのだから、何らかの目的があってのことだ。