糖尿病治療で重要なABCDE
一方、糖尿病ではない人でも、がんの抗がん剤治療の際に吐き気・嘔吐の予防薬として使うステロイド内服薬によって血糖値が上がる場合がある。
「ステロイドホルモンは血糖値を上げる作用があり、患者さんによっては一時的に糖尿病になる場合があります。ステロイド薬によって高血糖になる時間帯が異なり、作用時間が短いプレドニゾロンは昼食後から夕方、作用時間が長いデキサメタゾンは1~2日間くらい高血糖を引き起こします。薬によって高血糖になった人に対しては、その薬を使う間だけインスリン療法を行いますが、薬の作用時間、患者さんの食事の量によってもインスリンの量を調整します。もともと糖尿病の人はさらに注意が必要であり、やはり、糖尿病の専門医のいる病院でがん治療を受けたほうがいいわけです」と岩岡さんは話す。
健康診断で「血糖値が高い」と言われたまま、放置している人は少なくない。血糖値が高いだけでは特に症状はないが、糖尿病は、じわじわと動脈硬化を促進させ心臓病と脳血管疾患、認知症のリスクも増やす。岩岡さんによると糖尿病治療で重要なABCDEは、Aアルコール(Alcohol)は少量に、B体重(Body weight)の適正化、C喫煙(Cigarette smoking)はストップ、D食事(Diet)は適量に、E毎日歩いて運動(Exercise)を。仕事や家事、育児が忙しいと、ついつい暴飲暴食をし、運動不足になりがちだが、がん、心臓病、脳血管障害、認知症といった重大な病気を予防するためにも、血糖値が高い状態を放置せず早めの治療と生活習慣改善を心がけたい。