コロナ自粛の中、糖尿病が境界型に突入、あるいは発症にまで至る人が急増している。新著『医者が教える最強の解毒術』が話題の糖尿病専門医・牧田善二医師は「『糖尿病は血糖値だけ下げればOK』と勘違いしている人が多いのですが、一番の課題は血糖ではなく、合併症対策、とりわけ糖尿病腎症予防が重要です」と警鐘を鳴らす──。

糖尿病で「知るべきポイント」5つ

コロナのリモートワーク、巣ごもりといった「自粛生活」で、運動不足や偏った食事の問題から高血糖になる人が増えています。中には糖尿病を発症する人も……。

糖尿病の患者さんは、新型コロナウイルスに感染した際の重症化リスクが3.4倍になるというデータもありますから(JMDC、2021年)、糖尿病の患者さんや、発症リスクが高い、いわゆる「境界型」の人の多くが不安を抱えていると思われます。

私は医師になって40年以上にわたり、糖尿病合併症と闘ってきた糖尿病専門医です。現場の専門医の立場から、糖尿病に関して「押さえておくべき5つのポイント」について、お話ししたいと思います。なお、とくに断りなく「糖尿病」と記述しているものは、2型糖尿病のことを指しています。

ドーナツを目に当てて自撮りする女性
写真=iStock.com/champlifezy@gmail.com
※写真はイメージです

①糖質制限に過剰に期待しない

「糖尿病には糖質制限こそ一番いい方法なのだ」という誤解がいまだにあります。

糖質制限がブームになる前から、いち早く、糖質制限が血糖値のコントロールに有効だということや、人間を太らせるのはカロリーではなく糖質、つまり、ごはんやパン、麺類などの炭水化物だということを広く世に伝えてきた立場で断言しますが、近年、糖尿病治療は革命的ともいえる進化を遂げました。もはや厳しい糖質制限などせずともよい時代になっています。

そして、糖尿病患者、あるいは糖尿病が心配な人は、年代別に上手に糖質制限と付き合うことをおすすめします。

■44歳以下

まだまだ人生の先が長いこの年代は、太りすぎないように、BMIを標準レベルにまでもっていったほうがいいでしょう。男女共BMI25未満を目標にしましょう。というのも、この年代から肥満していると、糖尿病をはじめとする病気にかかりやすくなり、健康で長生きすることが難しくなる可能性があるからです。

牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)
牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)

食べすぎ、炭水化物の摂りすぎ、体重増加傾向にあるこの年代の人は、糖質制限を取り入れることは意味があるといえます。一番効果があるのは、夕食に糖質制限を取り入れることです。またランチも、丼物やチャーハン、ラーメンなどをなるべく避け、定食のおかずを多く食べるようにしましょう。

そして運動は、減量目的というより、仕事のストレス解消に好きなことをやったらいいと思います。

お菓子を食事の代用とする女性が多いのもこの年代。まだ若いために、めちゃくちゃな食生活でもなんとかなってしまいます。

しかし、体の中では高血糖の問題が起きている可能性が高いといえます。そして、それが数十年後の大きなわざわいとなって現れますから、注意が必要です。とくにコロナ禍の自粛生活において、若い世代ほど気をつけていただきたい点です。