■45~64歳

45歳を過ぎたあたりから、これまで健康自慢だった人もだんだんと検査の結果に異常が出始めるはずです。糖尿病や高血圧といった生活習慣病はもちろんのこと、がんにかかる人も増えてきます。働き盛りで、家のローンや子どもの教育費などお金もかかることから、「いま倒れるわけにはいかない」と、体が心配になる年代です。

この年代は、男女共にBMI30未満を目標にしましょう。ここまでゆるやかな基準にするなら、厳しい糖質制限は必要ありません。この基準を超えるときだけ、糖質制限を行って体重を調整すれば十分です。

運動は、まだ筋肉減少の心配はありませんから、血管系を強くする有酸素運動をしっかりやることをおすすめします。

新型コロナ感染対策による健康二次被害を避けるという観点から、スポーツ庁がガイドラインを示しています。糖尿病に限らず、健康を維持するために意識的に運動・スポーツに取り組んでいくことが大切です。

■65歳以上

いよいよ仕事をやめて年金生活に入るという人が増えるこの年代は、生活スタイルが激変するタイミングです。

まず、現役時代より運動量が減る。加えて、基礎代謝が大幅に低下します。以前と同じように食べていると体重が増えていき、その一方で、やせにくくもなります。かつては一日一食だけ炭水化物を抜く「プチ糖質制限」でも体重は落ちたのに、そうはいかなくなります。

70歳を超えたら糖質制限は不要…

それでも、とりわけ70歳を超えたら、BMIにかかわらず糖質制限は不要だと私は考えています。自分の経験からしても、もはや色気より食い気。おいしいものを食べることがいちばんの喜びになってきます。それを我慢して、なんの人生かと思います。

後述するがんや心臓病、脳卒中などの検査をしっかり受けて、あとは好きなものを好きに食べていいのではないでしょうか。

ただ、いわゆるロコモティブ症候群におちいりやすくなりますので、運動は必須。それゆえ、65歳をすぎたら、糖質制限より運動を重視したい。具体的には、有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチをバランスよく行うことをおすすめします。

糖質制限の効果は、あくまで「やせること」と「血糖値をコントロールできること」の2点のみです。それ以上に健康効果が得られると期待するのは誤りです。「糖質制限さえしていれば糖尿病は大丈夫」という間違った思い込みに陥らないように、この点は十分に注意してください。