とくに強調したいのが、「尿アルブミン検査」の重要性です。似た名称の検査に血液中の血清アルブミンの検査がありますが、まったく別物です。私の患者さんが地方に転勤した先でかかった病院で、勘違いした医師がいて驚いたことがありますが、「尿検査でアルブミン値を調べること」、これが最重要です(単位はmg/g creatinine)。
私は15年前から、この検査がいかに大切かを本に書いて啓蒙してきました。しかし、残念ながらいまだ普及が見られていません。しかし、読者のあなたはいま知りました。これをチャンスと思って、ぜひ試してみてください。
尿アルブミン検査こそ、糖尿病の患者さんが真っ先に受けなければならない検査です。これを定期的に(3カ月に1回くらい)受けていれば、人工透析をまぬがれることができます。
糖尿病の人はもちろん、そうでない人も、尿アルブミンが300mg/g creatinineを超えたら、腎症がかなり進行して透析の危険が迫っています(糖尿病腎症のステージでは第3期。第5期になると透析です)。この検査を定期的に実施し、腎症を治すことができる信頼できる専門医にかかりましょう。
「専門医にかかりましょう」としつこく書いているのには理由があります。かつて、私も面識のある作家が、糖質制限を過信し、「医者いらずで糖尿病を克服した」と周囲に吹聴したものの、命を落とす結果になった悲しい出来事があったからです。糖尿病は完治することはなく、上手に共存していくべき病気であり、合併症治療には専門医の知識と経験が必須です。ここはしっかりご理解いただきたい点です。
⑤糖尿病の最大の敵は「がん」「心筋梗塞」「脳卒中」
糖尿病になって、命に直結する最大の問題は何かといえば、血糖値でも合併症でもなく、命を奪うがん、心筋梗塞、脳卒中です。糖尿病患者さんは、そうでない人に比べて平均寿命が10年短いというデータがありますが、糖尿病になることで、こうした命にかかわる病気になるリスクが急上昇するからなのです。
ですから、糖尿病の患者さんは、これらの病気にかかる頻度が高いことを自覚して、確実な検査をすることがどうしても必要になってきます。
たとえば、たった20秒で済んでしまうCTスキャンによる検査を毎年受けていれば、肺がんなどで死ぬことはありません。ですが、実際には、実践している人はほとんどいないと思います。
その観点から、糖尿病患者さんが受けるべきは、①胸部と腹部のCT、②胃腸のカメラ、③脳のMRIの3つです。