日本に生まれる1000万人の余剰労働力

仕事のやり方に革命を起こす(星野リゾート・星野佳路社長)。

星野リゾート的な経営手法が広まれば、業界全体で見れば生き残るホテルや旅館の数は半分になるだろうし、生き残ったところで働く人の数は半分で済む。となれば残り半分の人たちは労働市場に出てくるしかない。

日本企業の間接業務の生産性はアメリカの半分しかないと説明したが、就業人口の6割を占めるサービス業で間接業務の生産性がアメリカ並みになったら、1000万人以上の人が溢れ出てくる。だからどう考えても日本は人余りになるはずなのだ。

物流業界でもドライバー不足と言われるが、配送効率はまだまだ上げられる。コンピュータ管理を徹底して、積み荷が空になった部分に混載するようにすればもっと荷は詰められるし、いわゆる「サード・パーティ・ロジスティクス(3PL=荷主でもない、運輸業者でもない第3の事業主体が物流業務のすべてや一部を包括的に受託するサービス)」による効率化の余地も大きい。

私が提案しているのはラストワンマイルの配送を1社に集約するデリバリー組合の設立だ。新聞から郵便物から宅配便まで、入れ代わり立ち代わりに家庭にものを届ける業者がやってくるが、目的地に届ける“最後のワンマイル”のデリバリーを1社に集約できれば、物流の効率は飛躍的に向上する。地区ごとに宅配会社のうちの1社を決めて、各社はそこに配送する。そこから先は、その地区を任された会社が“右代表”で各家庭に届ける。顧客にとっても、何回もベルを鳴らされないで済むし、郵便受けまで何回も足を運ぶ必要がなくなる。そうした仕事の創意工夫が足りないために、日本全体で人材の適正配分ができていない部分が数多く残されている。これが解消されていけば、当分、日本は人手不足にはならない。

エンジニアやウェブデザイナーなどのクラウドソーシングサービス最大手のクラウドワークスが昨年12月に新規上場した。登録会員数は16万人を突破して、まだ伸びている。彼らのビジネスモデルの恐ろしさは、家事や子育てなどで家庭に収まっていた人材を労働市場に時間単位で引っ張り出すことだ。主婦が自宅で赤ちゃんを寝かしつけたわずかな時間に、「クラウドワーキング」できる。

クラウドワーキングしたい人たちがこれから労働市場に染み出してくるのだから、もっと人は余ってくるはずだ。つまり、人手不足という問題は20世紀的な仕事のやり方を21世紀に持ち込んだから起こっている一時的な現象で、日本は少し知恵を使って工夫すればまだ数千万人は余ってくるのである。

(小川 剛=構成 ロイター/AFLO=写真)
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