間接業務の仕事のやり方に革命が必要だ

震災復興やオリンピックの需要が続く建設業など一部の分野では、確かに深刻な人手不足に悩まされている。しかし、私が知っている企業経営者から聞こえてくるのは人手不足よりも、むしろ人余りである。日本の場合、間接業務の生産性が非常に低い。アメリカの50%以下という状態が一向に改善されない。下手をすれば業務のやり方は新興国よりも遅れている。

本来、コンピュータや通信機器、OA機器がこれだけ進化しているのだから、その都度、業務内容も進化していくべきなのに、日本企業の間接業務はまったく変わらない。「会社のしきたり」という美名のもとに業務の内容を古参が支配していて、仕事のやり方をITスキルの乏しい古参社員が新人に教えている。業務効率から言えば逆である。新人が古株を教育するか、古株をリストラしたほうがいい。

大体、日本の企業組織にはトップの言ったことをメッセンジャーボーイみたいに下に伝えるだけの部長や課長が相変わらず大勢いる。私にゼロベースの組織改革をやらせてもらえれば、40%はカットできる。

仕事のやり方には今、世界中で革命が起こっている。しかし日本は生産現場の革命は早いが、間接業務ではなかなか革命が起きない。それから本当なら営業現場のような人手を食う業務は一番に革命が起きなければいけないのに、いまだに(紙ベースの)営業日報をつけさせている会社がある。値引きするのにいちいち上司にお伺いを立ててハンコをもらわなければいけない慣習など無駄の極みだ。自動化して値引きの条件をコンピュータに入れておけば、イエスかノーか顧客の所にいてもスマホで瞬時に答えが出る。上司の仕事もなくなる。朝9時に営業マンを集めて「頑張ってこい」と気合を注入して、夕方5時にも皆で顔を揃えて営業報告している会社なんて日本の外では見たことがない。直行直帰が常識だ。

日本の古いホテルや旅館を次々と立て直している星野リゾート。彼らの再生手法の基本はマルチタスクである。日本のホテルや旅館では業務が専門化していて、たとえばフロント業務はフロントマンが専任で担当する。

しかし星野リゾートが再生を請け負ったところではフロントマンが時には掃除をしたり、買い出しをしたりと、一人の人間が3つも4つも仕事をこなす。フロント業務などは忙しい時間帯が決まっているのだから、1日中張り付いている必要はないのだ。

業務をマルチタスク化することで、ホテルのようなサービス産業の経営効率は2倍以上になる。マルチタスクに慣れてくると従来の半分の人間で仕事が回せるようになるわけだ。特にサービス業の場合、パソコンやスマホなどのITで業務を管理し、情報共有を徹底してマルチタスク化を進めれば、専任の人間は少なくて済むはずだ。人手不足を嘆く業界の多くで、こうした業態変更が行われていない。