ぶっちゃけ、どれくらい安くなるか→「売上高型」か「件数型」かを見極める

その商品をいくらで買うか。価格交渉は、経営の根幹にもかかわる大切なイベントだ。希望の価格で合意するには、サプライヤー側の事情を察知し、それに合わせて柔軟に条件提示をすることが大切だと高島氏は指摘する。

「私は別に、自分だけが有利になるように交渉をしているわけではありません。互いにウイン・ウインの関係にすることがすごく大事だと思っています。会社と会社だけではなく、参加する人にとっても『いいこと』であるべきです。たとえば、そのときの合意内容が相手の立場を傷つけそうだと判断したら『社内で提言をあげていただくよりは、私のほうから話をしましょうか』と持ちかけます。その人自身が『評価されないリスク』を抱え込んでしまって、話が進まないというおそれがあるからです」

適切な判断を下すには、相手の立場をきちんと把握していなければならない。高島氏のやり方はストレートだ。

「何があなたの業績評価指標ですか、と正面から聞くのです。すると、どうやったら先方の社内で話が通りやすいかということがわかります」

さて、営業マンとの価格交渉の場面である。高島氏によれば、営業マンには会社や業種によって「売上高タイプ」と「アカウント(件数)タイプ」が存在する。同じ顧客との取引を大きく育てることが評価の対象になるか、新規の顧客を開拓することが重視されるかの違いである。

「僕たちとしては、なんらかの方法で値段を安くしてほしいと思っています。そのとき、クライアントの数を増やしたいと考えている営業マンに『倍の量を発注するから3割引きにしてくれませんか』と持ちかけても、相手の動機とすれ違ってしまうから話が通じないわけです。こういうケースはけっこうあるんです」

ここで営業マンに質問をぶつけ、「何が評価の対象になっているか」を聞き出すことができれば、対応の仕方も見えてくる。たとえば、相手がアカウントタイプだった場合――。

「『この案件は年間で発注するので、そのたびに別々のアカウントで発注します。10のアカウントを作ります。それで安くしてもらうことはできますか』と提案します。すると相手のほうも、交渉に乗ってきてくれるのです」

といっても、この作戦が通用するのは、ストレートに質問してストレートに答えてくれた場合のみ。相手によっては答えにくいことかもしれないからだ。そのときに威力を発揮するのが、高島氏のいう「空気を読まない担当」の少々失礼な質問だ。事前に担当者を指名しておき、その場の責任者(たとえば高島氏)が席をはずしたときなどに、フランクな口調で語りかけ、必要な情報を引き出すのだ。