高給経営者は「創業者」「スカウト」「外国人」

(4)経営者としての功績

就任後、どれだけ企業価値向上に功績があったか、ということです。

例えば、信越化学工業の金川千尋会長は、日本経済のバブル崩壊後も、着実に業績を伸ばし、高収益企業としての地位を揺るぎないものとしました。また、富士フイルムHDの古森重隆会長も、写真フィルム市場が急速に縮小する中、デジタル化、更には医療分野への大胆な事業転換により、会社をピンチから救った立役者です。お二人とも、創業者でも大株主でもありませんが、現代の名経営者として、会社に多大な貢献を果たしてこられました。

中小企業でも、就任後に業績を大幅アップさせたり、企業危機から立て直しを実現したような経営者は少なくありません。

このように経営者として、就任後どのくらいの功績を残したかという点は、非常に重要です。ただし、日本の場合、功績=報酬に直結しない会社が多いことも、事実です。実績の伴わない高給経営者がいる反面、高い実績を実現しているにもかかわらず、社内の序列に阻まれ低報酬に据え置かれる役員も少なくないのです。

(5)企業業績

一般の人から見れば、「企業業績」は最も理解しやすい要素ではないでしょうか。会社の業績が良ければ、報酬を支払うための原資が豊富ということですし、株主や周囲からの納得も得やすいでしょう。

しかしながら、(4)の「経営者としての功績」同様、意外と逆の現象が見られます。日産のカルロス・ゴーン社長が、トヨタの豊田章男社長の数倍の役員報酬というのは、有名な話です。また、赤字続きの会社であっても、高給を取り続ける経営者は少なからず存在します。

このように見てくると、「企業規模」「企業業績」「経営者としての貢献」といった、誰が見ても納得しやすい要素は、役員報酬決定の条件としては有効なものの、それ以外の要素も大きく影響していることが分かります。

「オーナーか否か」「内部昇格か外部からの招聘か」といった要素のほか、「経営者(決定権者)の役員報酬に対する考え方」によって左右されているのです。特に上場企業においては、「創業者(もしくはオーナー)」「スカウト」「外国人」というのが、高給経営者の3要素といえるでしょうか。

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