政治リーダーに必要な洞察力、責任力、実行力

【塩田】3年3カ月、野党を経験した自民党が変化したと思うのはどんな点ですか。

【山本】中の風通しが非常によくなった。以前は先輩政治家がにらみを利かせて、何も言えないという雰囲気があったけど、それがなくなったと思います。

それから、できるだけ地方に出向かなければという気持ちがみんなにある。有権者により近づくような感じにならなければという反省が生まれたのではないかと思いますね。

野党体験は面白かった。自民党にとって大きな肥やしになっているところがある。いま私らが野党だったら、もっと厳しく追及をするのに、と思ったりすることがあります。

【塩田】党の体質や構造という点で、大きく変化したと感じるところがありますか。

【山本】非常に強く感じます。首相官邸の力が強くなっているのは確かでしょうね。衆議院議員の選挙に小選挙区制が導入されてから、なかなか官邸に歯向かえなくなってきた。

【塩田】大蔵官僚を経て国会議員になっていますが、大学卒業後、なぜ大蔵省に。

【山本】子供の頃、始まったばかりのテレビ放送の国会中継で、当時の池田勇人首相の所得倍増などの演説を見ていて、政治家が面白そうだという感じを持った。母親から「世のため人のため役に立て」といつも言われていたから、大学に入ってから、民間の金儲けなどではなく、政治家がいいと思った。だけど、すぐには政治家になれない。池田元首相のように、大蔵省にいけば政治家になれる可能性があるのではと思った。
【塩田】政治家になって、どんな目標を達成しようと思ったのですか。

【山本】やはり財政、金融です。日本経済を立て直せたらいいなとずっと思っていた。

【塩田】政治リーダーに必要な資質や条件はどういう点だと思いますか。

【山本】それは洞察力と責任力と実行力。

【塩田】政治家になって、いままでで一番辛かったことは何ですか。

【山本】日銀を批判して、脱デフレ政策が必要と言い続けてきたのに、「あいつは変わり者だ」とか「極端すぎる」と見られてきた。それからポストにも恵まれない。阻害されたような感じがずっと続いたことですね。

【塩田】反対に一番嬉しかったことは。

【山本】それでも信念を曲げないで言い続けてきて、安倍さんのお陰で一気に変わり、私が主張してきた政策が採り入れられて成果を上げたことです。ここまでの努力を無駄にしたくないので、また一踏ん張り頑張らなければと思った。

(このインタビューは2014年11月7日に行いました)

山本幸三(やまもと・こうぞう)
自民党・元経済産業副大臣・アベノミクスを成功させる会会長
1948(昭和23)年8月、福岡県北九州市門司区生まれ(66歳)。福岡県立京都高校、東京大学経済学部卒。大蔵省に入省し、アメリカのコーネル大学大学院留学やハーバード大学国際問題研究所客員研究員を経験する。蔵相秘書官などを務め、1987年に退官。90年の総選挙に自民党公認で出馬したが、落選。93年の総選挙で初当選した(新生党・旧福岡4区)。03年の総選挙で落選したが、現在まで当選6回(現在の選挙区は福岡10区)。新生党、新進党を経て、2000年の総選挙の後に自民党に復党した。「政治家は喉と脚だ」と思い、5~6年前から「小唄」で喉を、「アルゼンチンタンゴダンス」で脚を鍛えているという。著書は『豊の国・北九州に立つ』『日銀につぶされた日本経済』など。
(尾崎三朗=撮影)
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