『コーヒーが廻り世界史が廻る』も同様に世界史への興味をかきたててくれる本です。コーヒーは東アフリカ原産の豆がイスラム教を背景に嗜好飲料となりました。18世紀にそれが欧州に渡って人気を呼びます。コーヒー豆の生産や取引は植民地での奴隷制度につながっていく一方、欧州では多くのカフェができ、そこに集った人たちから新聞や雑誌、啓蒙思想、政党などが生まれました。コーヒーがこれほどまで世界を動かし、歴史に関与している。そうした世界史のダイナミズムが伝わる本です。
『日本の<地霊>』は国会議事堂など建築や都市をテーマにした本です。日本の近代建築の多くは西洋の建築様式を取り入れています。その原点が古代ギリシャのパルテノン神殿。ルネサンスを経て建築様式として確立され、日本の建築にも導入されました。しかし、国会議事堂だけは違う。その謎から始まる本書ですが、建築物を通して古代のギリシャ、エジプト、ルネサンス期のローマと広がっていきます。お勧めしたい一冊です。
『東大のディープな世界史』
(祝田秀全/中経出版)
――東大の過去問を解きながら、その深い世界を楽しむ。
『コーヒーが廻り世界史が廻る』
(臼井隆一郎/中公新書)
――コーヒーというひとつの商品から世界史を読み解く。
『日本の<地霊>』
(鈴木博之/講談社現代新書)
――国会議事堂の都市伝説から世界史へ発想が広がっていくミステリーのような展開。