世間のことがある程度わかった大人になってから、受験科目を見直してみると、なかなか知的好奇心をくすぐるものがある。もはやテストの心配もない。「大人の教養」を楽しんで身につけてみませんか?

異なる視点から自分なりの歴史観を身につける

代々木ゼミナール講師 菅野祐孝 
「立体パネル」と呼ばれる独自の講義法を開発。著書に『学校では教えてくれなかった!世界のなかのニッポン近現代史』。

日本史は他の受験科目とは異なり、社会人になっても触れる機会が少なくありません。NHK大河ドラマの題材にも取り上げられますし、歴史小説も広く読まれています。

ただ、どこかで学び直すことも大切だと思います。というのも昔、学校で習ったことが、今では異なるケースがあるからです。

たとえば聖徳太子は現在「厩戸(うまやど)王」であり、実在したかどうかも疑問符がついています。おなじみの源頼朝の肖像や足利尊氏の騎馬像も違う人物の疑いがあり、教科書からは削除されています。

歴史は研究によって定説が翻ることがあります。昔、あなたが学校で習った歴史は間違いかもしれません。教科書は正しいという思い込みは危険です。お子さんがいらっしゃるのなら今の教科書を読み直してみるのもいいでしょう。

では、歴史をどう読むか。同じ出来事でも見方によって、まるで変わってしまうのが歴史の面白いところです。

まず押さえておきたいのは『この国のかたち』。司馬遼太郎の歴史エッセイです。歴史小説の大御所のエッセイだけあって文章が巧み。センテンスが短く心地よく読み進められる。それでいて一行に込められたエキスは濃厚で、歴史の場面や諸相を浮かび上がらせます。「日本と仏教」「戦国の心」といったテーマに沿って展開される論も読む者の興味を引きつけます。教科書にはない視点から歴史のひとコマを味わえる。