「このままローソンで働き続けてもいいか」

「社長に就任して8年目ごろに、このままローソンで働き続けてもいいのか、と思うようになりました。そのような中で玉塚社長を4年前ぐらいに連れてきて、後継社長をどうするか、考えていた。玉塚以外にも何人か候補はいたが、まだまだむずかしい状況だった。後継者の養成に取り組んだことと3年前に佐治さんに声をかけていただいた時期は一致しますが、そのときにはローソンがしっかりと成長し続けることのできる体制を作っていきたいということで頭がいっぱいでした。それが1年ぐらい前にやっと玉塚に絞り込んで、こんな感じでやっていけばいいんじゃないのか、ということがはっきりしてきた。そこで6月にお世話になった人たちに『10年一生懸命やってきた。次のステージに行ってもいいでしょうか』とお話ししたわけです」

しかし乗り越えなければならない課題はある。新浪にとってサントリーはアウェイ。旧家に嫁ぐ新妻のようにその家のしきたりをまず、理解し、そこできちんと実力を認めてもらわなければならない。姑や小姑がそこで虎視眈々と狙っているかもしれない。

しかも新浪の出身母体である三菱グループの中核企業であるキリンビールはライバルであり、かつて経営統合の話が浮上し、佐治社長が推進してきたが社内的な反対もあり、頓挫した。社内にはかつてのキリンビールとの統合を思い返し、それが三菱グループに近い新浪へのアレルギーを生む可能性も否定できない。

そしてもうひとつは取引先。これまでローソンの社長としてコンビニや流通業界で戦ってきたライバルたちが今度は取引先となる。いきなり新浪色を出し、新しい取り組みを進めていけば、反対勢力が後ろから前から押し寄せてくる。新浪は厳しい立場に追い込まれることは火を見るよりも明らかだ。

佐治は「新浪さんが一番力を発揮できるようにするのが私たちの2人3脚だ」と言明し、鳥井信吾副社長と青山繁弘副社長は副会長として佐治とともに新浪のサポートに回るという。

「佐治社長のプレッシャーを感じながらも早く実績を出したい」と語る新浪。「前門の虎、後門の狼」これをどう乗り切り、実力を発揮できるのか、今後の成果はそこにかかっているといっていいだろう。(文中敬称略)

関連記事
サントリー佐治会長「やってみなはれ、新浪さん」
二次会を断って筋トレを続ける理由 -ローソンCEO 新浪剛史氏
リーダーの役割はトレードオフの断行 -ローソンCEO 新浪剛史氏
サントリー、ビーム社買収で“悲願”総仕上げ
今こそ経営学を学ぶべき3つの理由