こうして『毎日何か新しいことが起きるマシン』『毎日電源を入れてもらえるゲーム機』……と次々コンセプトが加えられ、ならば家族の健康管理をするゲームはどうかといった発想へと発展していった。もしハードはハード、ソフトはソフトで別の評価軸で動いたら、ここまで非連続な世界へは踏み込めなかった。出口が見えないときはつくりながら考える。一歩進むと根っこのコンセプトが具体的なアイデアで補強され、骨太になっていく。数え切れないやりとりの中でコンセプトが浸透し、共有され、プロダクトに結実した。
重要なのは異なる部門が素早いキャッチボールを繰り返しながら同じ目標、目的に突き進むことです。
(2007年3月5日号 当時・社長 構成=勝見明)
奈良雅弘氏が分析・解説
岩田氏が示すのは、少数の人たちの動きが組織内に伝播し、少しずつ社員の認識を変容させていくという、ユニークな束ね方である。いまだ世の中にないものの魅力と可能性を他人に伝えることは、とても難しい。人の想像力の水準にはどうしても差があるからである。
しかし、誰かがそれを具体的な形にしていくと、求められる想像力の水準は少し低くなり、理解する人の数は少しずつ増えていく。そしてやがて組織全体の認識になっていくのだ。
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。