年功賃金の一因は高い教育費負担
日本と異なりEU諸国では、経営層に昇進していく人は別として、一般的に30代、40代になると賃金カーブはフラットになっていき、一方で個人の仕事の守備範囲は限定されています。仕事で自分の先行きはある程度見えているので、自ずと猛烈に働くよりワーク・ライフ・バランスを重視した生き方になっていきます。
日本とEU諸国で賃金体系が異なる背景には、高等教育にかかる費用が日本は高いのに対しEU諸国では低いという要因もあります。日本では子供の教育費用を個人が負担するため、中高年の賃金が高くなっている側面があるのです。
子供の教育費用がかかる時期に差し掛かると、日本では大幅な年収減は避けざるをえません。このような面からも、40代ミドルの労働移動は難しくなっています。
しかし、40代ミドルの能力が劣っているから活躍の場がないのかといえば、決してそうではないと思います。日本企業の問題として、自社内でのみ通用する企業特殊能力しか身に付かないとよく指摘されますが、本当にそうでしょうか。もちろん必要となる専門的知識には違いがあるでしょうが、人と人とのコミュニケーションや、チームをまとめ一つ一つの仕事を進めていくやり方に大きな違いがあるとは思えません。
管理職としてチームを束ねた経験や一般的に求められるマネジャーの能力を持っている人は、他社や他の分野にいっても十分通用するはずです。
安倍政権は成長戦略の一環として「成熟産業から成長産業への失業なき労働移動」を打ち出しています。いま、閉塞した状況にいる40代ミドルに持てる経験と能力を発揮してもらうためにも、労働移動を支える仕組みを整備しなければなりません。
とはいえ「失業なき労働移動」とは耳触りのよい言葉ですが、実際には摩擦的失業が発生し、非常に難しい課題です。これを実現するには政策を含め、どのような条件が必要か考えてみましょう。