■国内製造業の競争力を徹底検証
『ものづくりからの復活』
藤本隆宏、日本経済新聞出版社
現代の主流派経済理論である新古典派は、ミクロ経済学とマクロ経済学の2層からなるが、中2階にあたる産業分析には積極的ではなかった。そこで著者の藤本隆宏氏はものづくりの現場に分け入り、日本の製造業の産業競争力の強さを詳細に検証している。また、顧客に向かって「よい設計のよい流れ」をつくり、それによって顧客を満足させ、社会に貢献し、自ら利益をあげて成長するものづくりの経済行為の仕組みを紹介する。ものづくりの現場から論じた、まったく新しい日本経済論が展開されている。
■現代社会の問題の核心に迫る
『経済学に何ができるか』
猪木武徳、中公新書
さまざまな価値がぶつかり合う現代社会。金融危機、格差と貧困、知的独占の功罪。経済学の基本的な論理を紹介しながら、それらの問題の核心部分に迫っていく。そして、鍵を握っているのは人間が合理的でないがゆえに必要な「制度」の役割と指摘したうえで、デモクラシーのもとにおける経済学の可能性と限界を問い直す。
1944年生まれ。高校卒業後、郵便局勤務を経て全逓本部に20年勤務。93年立教大学法学部卒業。2000年兵庫県立大学教授に就任。09年より現職を務める。主な著書に『すごい製造業』『中小企業は進化する』『中小企業新時代』などがある。