アジア圏の客は、109に確かな実利をもたらす存在だ。日本人客の平均客単価が7000円、ヨーロッパ圏の客は6000円なのに対して、アジア圏の客は1万5000円。年間来場者数は800万人と横ばいながらも、08年をピークに売り上げを落とし、かつての勢いを失いつつある109にとって、買う気満々で来館する外国人客は館活性化の切り札ともいえる。
テナントも変わり始めた。長く売り上げ1位の座をキープしているセシルマクビーはスタッフに中国人を採用し、サマンサベガは免税制度を適用した。109側もフロアガイドや入り口のデジタルサイネージ(電子看板)、ホームページを英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語の4カ国語で表示し、スタッフに指差し会話帳を配布。販売員向けには英会話教室も実施している。
「ただ、インバウンドで売り上げが上がることをわかっていない店舗もありますね。いま東急グループでは百貨店やホテル、電鉄やヒカリエなどと手を組み、都も巻き込んで、言語対応やピクトグラムの導入など、渋谷を外国人にとってストレスのない町にする取り組みを進めています。伸びしろは大いにあると見ています」(中里氏)。渋谷には訪日外国人が「一度はこの目で見てみたい」と熱望するスクランブル交差点もある。SHIBUYAの名前が世界共通語になる日は近い!?
ほかにもこんな場所、モノが人気
●BAO BAO ISSEY MIYAKE(東京・青山ほか)
近未来的なデザインが特徴の鞄。タイの王女様が愛用することで観光客にも人気が出た。丸の内、銀座等に店舗あり。A4が入るトートバッグで3万円台。
●御殿場プレミアム・アウトレット(静岡)
2013年8月、礼拝に利用できる「サイレンスルーム」を開設。要望が多い無線LANサービスも導入。タイ、インドネシアの顧客が特に多い。
●東急ハンズ(東京・渋谷ほか)
ラッピンググッズや文房具、寿司模様のマグカップなども売れている。外国人の圧倒的支持を誇る旅行ガイドブック「ロンリープラネット」に掲載あり。