では、今回の増税で、どんな事態が起きうるのか。アベノミクスによって景気回復が期待されるものの、現時点ではその恩恵は高額所得者が中心だとも言われる。増税で富裕層が消費を手控えた場合、庶民が恩恵を被る前に景気がしぼむ可能性もなくはない。

さらに富裕層に追い打ちをかけるのが、相続税の増税だ。15年から相続税の基礎控除が、現行の(5000万円+1000万円×法定相続人の数)から、(3000万円+600万円×法定相続人の数)へと引き下げられる。これによって地価の高い大都市圏に戸建ての家を持っているだけで相続税の対象になる可能性が高くなる。ちなみに、現在は相続税の課税対象者は被相続人の4.2%程度だが、改正後は10%程度に増えると見られる。

税率も引き上げられる。現行では、法定相続分の取得金額が1億円超~3億円以下の場合は税率40%、3億円超は50%となっている。ここに2億円超~3億円以下、6億円超という区分が新設され、税率はそれぞれ45%と55%になる。

不動産を相続したものの、手持ちの現金が少ない場合、相続した不動産を売却して納税資金をつくるか、それでも足りない、あるいは売れない場合には、今住んでいる自宅を売って資金をつくらざるをえないケースもありうる。富裕層をターゲットにした増税の結果、彼らが消費を手控える。その結果、庶民の給料が上がる前に景気がしぼむ。さらに相続税を支払えず、自宅を手放す羽目に陥る人が相次ぐ。これが、今回の増税で考えうる、最悪のシナリオだろう。

(構成=大山弘子)
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