楽天・三木谷が脱退課題は政権との近さ

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経団連の歴代会長

これに対し、第3代の植村甲午郎は、高度成長がもたらした負の側面、公害やインフレといった問題で一般国民からも攻撃を受け、ニクソン・ショックや石油ショックに対してもリーダー・シップを発揮することができなかった。また「橋本六大改革」が山一證券や北海道拓殖銀行の破綻を生んだ後に第9代の会長になった今井敬(新日鐵)、リーマン・ショックと民主党政権誕生への対応に追われた第11代の御手洗冨士夫(キヤノン)、震災と原発問題に遭遇した現会長の米倉は、政治に頼った企業経営を必要としたため、政治との関係では、劣勢を強いられた。

興味深いのは第10代の奥田碩(トヨタ自動車)である。奥田は今井とともに、旧経団連と日本経営者団体連盟の統合を主導し、また、新生経団連の初代会長として、小泉純一郎内閣の経済財政諮問会議に参画した。当時、トヨタはバブル崩壊後の数少ない勝ち組として、1兆円を超える利益を稼ぎ出しており、小泉内閣にも強い影響力を発揮すると思われた。しかし結果的には、そうはならなかった。

奥田は、自身の上司でもあった豊田が経団連会長として求めた「橋本六大改革」の失敗を教訓に、急進的な改革よりも漸進的な改革を望むようになっていた。そのため、消費税増税や法人税減税、社会保障改革、雇用規制緩和などを要望していた。だが、小泉には、国民に不人気な漸進的な政策ではなく、見栄えのする急進的な改革を目指したいという意向があった。このため「郵政民営化」が改革の焦点となったのだが、小泉政権と一蓮托生となっていた奥田はその流れを変えられなかった。

こうしたことから考えると、経団連が権勢を保つ必要条件は、第一に、政府に頼らずに企業経営を成功させること、第二に、政治に深入りしすぎないことであると言える。

第12代の現会長・米倉弘昌は、自民党政権に深入りしすぎた反動として、民主党政権と疎遠になり、「六重苦」と呼ばれる経営環境に苦しんだ。

今回、経団連会長が引き続き製造業界から選出されるということで、ひとまず政治に対しては引き続き漸進的な改革を求めることが予想される。他方、政治との距離の取り方に関する失敗は尾を引くとみられる。2012年の総選挙の際、米倉は「アベノミクス」に対して疑義を呈して安倍首相との関係を悪化させた。また、安倍政権による賃上げ要請に対しても、徹底した反対を貫くことができず、春闘に対する方針提言、『2014年版経営労働政策委員会報告』では、遂にベース・アップを容認するに至っている。

このような、言わば腰が引けた経団連に対しては、例えば楽天の三木谷浩史がその体質に失望して新興産業主体の「新経済連盟(※2)」を立ち上げたように、これから成長が期待できる産業に限って離反していくことも予想される。

新体制の経団連が権勢を回復するための2つの条件を満たせるかどうか。既に榊原は産業競争力会議のメンバーとして安倍政権の中枢に入り込んでしまっている。その近さは、これまでの経団連と政治の歴史を考慮すると、むしろマイナスに影響するだろう。(文中一部敬称略)

※1:日本経済新聞電子版「経団連会長『後任会長は製造業から』政権との距離が課題」(2013年6月4日)。
※2:前身は2010年2月に設立された「eビジネス推進連合会」。12年6月に「新経済連盟」と改称。新経連の団体資料によると、団体会員数は693社で、そのうち上場企業は97社(2014年1月8日現在)。

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