雑談力を支えるのは、側頭連合野に蓄積されたさまざまな知識や経験。1つの話題から、どれだけ多くの関連した話題を「連想」することができるか。その点にこそ、雑談力が表れる。
つまり、雑談力を鍛えるためには、好奇心の強い人でなければならない。世の中の森羅万象、さまざまなことに、イキイキとした興味を持ち続ける。会話の中で、相手が発した一言に、眼を輝かせる。結局、雑談の成否は、過去の自分の好奇心の働きの、総合的な「通知表」であると言ってもよいのだ。
雑談には、隠れた大切な働きもある。すなわち、相手が考えていること、心の中で思っていることを「探り当てる」ということである。
仕事でも、プライベートでも、相手が今何を感じ、望んでいるかを知ることが大切である。さまざまな話題を振り、それに対する相手の反応を見ることで、気持ちを推測することができる。
雑談は、マジシャンやメンタリストが用いる「コールド・リーディング」の手法に通じるところがある。さまざまな話題を振り、相手の反応を見ることで、さりげなく、相手の真意を探る。やり手のセールスマンや、熟練したカウンセラーなどは、実質上のコールド・リーディングの手段として、雑談を用いる人が多い。たかが雑談、されど雑談。何気ない会話の中に、無限のコミュニケーションの可能性があるのである。
雑談は、1つのバロメーターでもある。話題がどう転ぶかわからない、一見ムダな雑談を楽しめる脳は、健康である。雑談がうまくいく人間関係は、良好である。雑談の「今、ここ」を楽しみたい。