友達になると、だいたい私のほうが立場は弱く、相手のいいなりになってパシリになる役回りなので、積極的に友達をつくろうと思ったことは、昔からほとんどありません。確かに友達は少ないですが、ぜんぜん寂しくなんかありませんよ。

昔の学生運動にしろ、オウム真理教にしろ、最初は友達から始まったものが、行き着いた先は犯罪であり、殺し合いですよ。何人かが集まると、だいたいリーダーというか親分が出てきます。そういう人についていけば、考えなくていいから楽かもしれませんが、その先には死が待ち構えているかもしれない。これは恐ろしいことですよ。

強いて言えば、なにか頼まれても気軽に断ることができ、相手も仕方ないとあきらめてくれる、さらりとした関係がいいのではないでしょうか。うまくいっているときはいいけれど、ひとつ間違えれば、相手を憎んだり恨んだりすることになる。友達っていうと、どうしても相手に過剰な期待をしてしまう。

人間はひとりで死んでいくのだから、もっとひとりの過ごし方、楽しみを覚えたほうがいいと思います。

仕事関係者からしか電話がかかってこないというのは、きっと真面目に働いてきて、家庭も大事にしてきた証しでしょう。それはとても立派なことじゃないですか。

どうしても新しい友達が欲しいなら、自分の趣味の延長で知り合うのがいいのではないですかね。できればひとりでもできる趣味。釣りとか英会話の勉強とか山歩きとかヨガとか。市からのお知らせなんかにも、そういう同じ趣味の人の集まる会がたくさん載っていますから、のぞいてみてはどうでしょう。私はそこまでして、欲しくありませんけどね。

漫画家、タレント 蛭子能収
1947年、長崎県生まれ。バラエティ番組やCMなどでも活躍。2012年のNHK大河ドラマ『平清盛』では時信を演じた。ギャンブルが大好きで、世界のカジノを旅している。
(構成=プレジデント編集部)
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