現在、高砂製作所には、4台の光造形装置(3Dプリンタ)が導入されている。このうち3台はプラスチックの一種であるABS樹脂を加工する普及機種だが、残りの1台は、石膏の粉末を接着剤で貼りつけていく特殊機種をあえて購入した。普及品タイプはABS樹脂の乳白色1色しか出せない。それに対して、“特殊機種”は、フルカラーの造形が可能となる。

三菱重工業原動機事業本部ブレード・燃焼器製造部生産技術課の川向誠一課長(左)、小牧孝直主任チーム統括(右)。

生産技術課製造IT技術開発チームの小牧孝直主任チーム統括は、フルカラー造形の利点をこう説明する。

「家電や自動車の部品と違って、ガスタービンの部品は、手に取って理解するのが大変難しい構造になっている。しかも、1台のガスタービンは6万~8万点の部品で構成されるので、組み立てた状態において、部品の位置をはっきりさせる必要がある。部品ごとに色分けできると、部品の設置場所がよくわかる。視覚化することで、組み立てる人、とくに新入社員や海外のパートナーの教育がスムーズに行えるメリットがあります」

技能教育だけでなく、大きな設計変更を迫られるとき、威力を発揮するのが3Dプリンタの実用性である。ガスタービンの部品はほとんどが重量物であり、実物大の模型(モックアップ)をつくって検証するのが難しい。それらをCADで設計してプリンタで造形すれば、現物を手に取り、部品同士の擦り合わせをチェックすることもできる。設計図だけでは形状を頭の中で想像するしかないが、現物があれば擦り合わせの感触さえも確認することが可能になる。