異文化受容力に加えて積極的な海外志向も企業の評価が高い。APUには交換留学生制度があるが、TOEFL550点以上とハードルが高く留学できるのは1学年の2割程度。しかしそれでも海外渡航の夢がやみがたく1年間休学してワーキングホリデーを利用して海外体験する学生が約4割もいる。現地で揉まれて培うコミュニケーション力も企業の魅力の1つだ。

APUではキャンパス内で様々な国籍が交じり合う。

「旧帝大の学生など最近はTOEICが800点というのは珍しくありませんが、APUの学生は700点だったりする。でも皆、海外経験を持っている。採用面接で、海外で働けますかと聞かれて、途上国は勘弁してほしいという学生もいるそうですが、自ら手を挙げて『どこでもいいから行かせてほしい』というのがうちの学生の特徴です。企業の側もうちの学生にはどれだけ英語ができるのか、はっきり言ってあまり求めていない。それよりも、いろいろな人とどんな環境であってもきちんとコミュニケーションできる能力を買われていると思います」(村田事務局次長)

高い異文化受容力、海外志向、国境を越えたコミュニケーション力。これが企業が求めるグローバル人材のポテンシャルであるとすれば、APUは明らかに企業のニーズを踏まえた教育を実践している。

日本の大学は、旧来型のマスプロ教育を漫然と実施するばかりで、企業が求める人材ニーズに応える教育を怠ってきた。企業もそのことをよく知っているために、大学の入試偏差値に過度に依存し、入学後の成績は採用選考の参考にしないという日本独特の風潮が長らく続いてきた。しかし、本当に欲しい人材を育成すれば、偏差値は低くても企業が採用することをAPUは実証した。

APUに限らない。04年に開学した秋田県の公立大学である国際教養大学も100%の就職率を誇る。1学年の定員は150人と少ないが、グローバル人材の養成という明確な育成ビジョンを掲げ、英語のみで授業を行うほか、1年間の海外留学を義務づけるなど従来の日本の大学にない特色を持つ。

1クラス15人以下を基準とする授業は、ディスカッションやディベート、プレゼンテーションへの参加を通じて自ら考え、主張できる能力を養う。さらに教員1人あたりの学生数は約10人と小学校の分校並み。教員の半数を外国人が占めるが、3年間の任期制であり、教員は専門の研究分野ではなく「教育力」で評価されるという徹底した教育重視の大学だ。

国際教養大学を訪問し、2人の学生を採用した大手石油会社の人事担当者は「全員が海外の大学に留学し、現地の学生と机を並べ、正規科目を30単位取得するらしい。留学前はTOEICが800点でも帰国後は全員が900点を超えるという。それだけ海外で揉まれてきた証拠であり、自分も若ければぜひこういう大学に行きたかった」と絶賛する。