大略、次のような話をした。

「エマソンの創業部門はモーター事業であり、私が日本電産を創業したころには世界的なモーターメーカーとして憧れの的でした。しかしその後の多角化によって、エマソンのモーター事業は全社のコア事業ではなくなっています。いまモーター事業を引っ張っているのは、かつての栄光を知っている方々です。あなた方にいいたい。もう1度『世界一』になりたいとは思いませんか。私たちと一緒になれば、それが可能なのです」

英語ができなくても、優秀な通訳がいれば話のエッセンスは伝わるのだ。逆にネーティブ並みの英語を操れても、話すべき中身を持たなければ何の効果も生まないだろう。

ただし、これはクルマに乗るときに運転手を雇うようなものである。私たち創業第一世代はそれでよかった。しかし、これからは会社そのもののグローバル化が進み、仕事のうえで日常的に外国人とのやり取りが必要になる。クルマに乗る頻度が上がるのだから、いちいち運転手に頼むわけにはいかないだろう。

だから若い世代には、外国語能力という「運転免許」を取得し、独力でドライブする習慣をつけてほしいのである。

日本電産社長 永守重信
1944年、京都府生まれ。67年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)卒業。73年に日本電産を創業し、現在に至る。
(面澤淳市=構成 芳地博之=撮影)
関連記事
「TOEIC800点未満」では仕事にならない理由
世界攻略のカギは「質のいい非常識」にあり -DeNA創業者 南場智子氏
「英語がペラペラ」にならないと一生ヒラ社員か
よいお手本は韓国のサムスン、LGにあり -日本電産社長 永守重信氏【2】
日本電産・永守重信社長に密着365日【1】