日本電産社長 永守重信●1944年、京都府生まれ。73年日本電産を創業し、以後同社を世界的なモーター専業企業に育てあげた。「アメリカ、アジアは制覇したので、今は欧州だ。そしてインド、南米を制覇した後、最後はアフリカだが20年以降になる」。

あるとき新婚早々の社内結婚の夫婦が、奥さんはアメリカへ、旦那は台湾へ別々に赴任するという人事が持ち上がった。

さすがに心配して2人を呼び、「結婚したばかりじゃないか。ほんとうに大丈夫か?」と念を押したところ、「海外に出られるいいチャンスです。しばらくは別れて暮らすのもしょうがないですよ」。まことに頼もしい答えが返ってきた。

最近の若手は海外勤務を嫌がらず、むしろ心待ちにしているようなのだ。彼らの姿に接し、私は日本電産が将来ますます強い会社になると確信している。

もっとも、日本人全体を眺めると、こうしたアグレッシブさはずいぶん薄まってきているように思われる。この意識を変えなければ、急激な国力の低下は押しとどめようがないだろう。

それにはまず、依存心をなくすことだ。いまはグローバル化の時代である。世界が相手である以上、お上のいいつけに従っていれば間違いない、という昔ながらの意識では戦っていけない。日本人は口癖のように「政府が悪い」「会社が悪い」「親が悪い」というが、自分の努力で道を開くという気概がなくてどうするのか。日本人は独立心を持たなくてはならない。

よいお手本は韓国である。資源に乏しく、日本以上に少子化が進んでいるのが韓国だが、韓国企業のサムスンやLGはライバルの少ない新興国へ積極的に出ていき、世界ナンバーワンの地位を築いている。たとえば最近訪ねたハンガリーでは、ソニーやパナソニックの看板は見当たらず、市場で見かけるのはサムスンやLGばかりである。世界へ出ていくことを恐れてはならない。

実は日本電産にしても、グループ従業員13万人のうち日本国内の雇用は2万人にすぎず、残り11万人はすべて海外である。たまたま日本に本社を置いているが、実態は日本企業というよりもグローバル企業である。