NHK会長 福地茂雄●1934年、福岡県生まれ。長崎大学経済学部卒業後、朝日麦酒(現アサヒビール)入社。同社の社長、会長、相談役を経て、2008年より現職。「番組のコストカットをしたらいいものはできない。スーパードライと同じです」

いまは放送事業だけではなく、すべての産業が変革期を迎えています。それも単純な変化ではなく、広範囲にわたり、奥行きが深く、スピードが速い、いわば「三次元の変化」です。もちろんNHKも例外ではいられません。

会長就任から2年間、私は「変えないのは視聴者目線で番組をつくるという一事だけ。それ以外は全部変える」と宣言し、全力で経営にあたってきました。部下にはいつも「何を変えるか」ではなく、変えることを前提に「どう変えたらいいか」から考えてくれと言っています。

その成果でしょうか、このところ視聴率が好調であり、番組の質や信頼感についても高い評価をいただいているのはうれしいかぎりです。

一部職員によるインサイダー事件など不祥事続きで信用失墜の危機にあった巨大組織NHK。2年前にその立て直しを託されたのが、アサヒビール社長・会長として同社の躍進を支えた福地茂雄氏だ。しかし当初は、73歳(当時)と高齢であることや業界経験がないことから手腕を不安視する声もあがっていた。

異業種に飛び込むことになったので、多くの人が「たいへんじゃないか?」と心配してくれました。

でも、考えてみてください。私がビールをつくっていたわけではないし、番組をつくっているわけでもありません。経営の仕事とは、職員に気持ちよく働いてもらうことと経営資源を適切に配分することです。業種が多少違っても、することに変わりはないのです。