定時に帰り、年収も高くなる働き方

国内での働き方についても触れておきたい。

10年4月に改正労働基準法が施行される。今度の改正は、残業時間が1カ月60時間を超えたら、50%以上の割り増しをしなければならないといった規制強化の方向である。

その結果、長時間労働に依存した日本型の労働スタイルは決定的に変わるだろう。生産性を高めて、時間内に仕事を終わらせるという欧米型のスタイルに近づけなくてはならない。もちろん一般従業員の場合、実際には残業代が生活費に回っているのだから、その分の目減りを防ぐ心配りも必要である。

日本電産は従業員のボーナスを営業利益連動型にしているが、生産性を上げて利益率が倍になればボーナスも倍になる。09年から利益率を倍に引き上げる「WPR」を推進しているが、これを達成できれば、定時に帰れるうえ、年収は前よりも高くなるということになるのである。

ただし、欧米流に統一するという意味ではない。ドライな契約社会がいいとは思えないからだ。日中の生産性を上げて時間内の報酬をきちんと払う。そのうえで、終身雇用のようなウエットな日本的慣行は残すのである。

もう一つ、われわれが忘れてはいけないと思うことがある。

日本経済はアメリカやヨーロッパになぜ勝てたのか。基本は、あるとき一生懸命に働いたからだ。技術力などの足りないところを、日本的ハードワーキングで補ったのだ。いまの中国やインドも当時の日本と同じ段階にある。ここでもし、中国やインドの人が欧米流のワークスタイルを取り入れたとしたら、絶対に先進国には追いつけない。

こういうと語弊があるかもしれないが、東南アジア諸国がなぜ中国のように日本の脅威にならなかったのかといえば、ひとつには欧米流のワークスタイルを少々早めに取り入れてしまったからだろう。

このことを、われわれ自身の教訓とするべきだと思うのである。

※すべて雑誌掲載当時

(面澤淳市=構成 芳地博之=撮影)