彼ら経営陣はわれわれと同じ常識を備え、誠実で、誇大な物言いを好まない。そして日本電産の経営や社風に敬意を示してくれる。いままでさまざまな外国人と接してきたが、ここまで信頼できる相手と出会ったのは初めてだ。

彼らへの信頼をベースに、私は日本電産グループの南北アメリカにおける事業をすべて日本電産モータに任せると決断した。12年秋の稼働を目指しているブラジルの製造拠点も、アメリカの日本電産モータが統括する。

これは1つのモデルケースである。今後は真のグローバル企業を目指し、世界中で分権化を進めていく。それにともない、グループ全体が体質を変えていかなくてはならないのだ。

基礎技術研究所内の共通語は英語

グローバル化にともない変化を求められるのは国内組も同じである。

たとえば京都本社の人事部長は、日本電産モータのアメリカ人の人事部長と日常的に電話で連絡をとる。そのときに使うのは英語である。世界的にはマイナー言語である日本語を外国人に強いるわけにはいかないからだ。

同じように総務・経理などその他の部門も、外国子会社のカウンターパートと直接やり取りするには英語で話す機会が増えるだろう。グローバル企業を標榜する以上、これまで外国語とは無縁と思われていた部署でも、当たり前のように英語が飛び交うようになるのである。

もう1つ例をあげよう。12年7月に1期棟が完成するモーター基礎技術研究所(川崎市)には、エマソンから引き継いだ研究者らアメリカ、イギリス、中国、インドなど各国の出身者がやってくる。所員300人のうち半数が外国籍となる計画だが、彼ら外国人と意思を伝え合うには事実上の世界共通語である英語を用いるのがベストである。したがって、基礎技術研究所内の共通語は英語とすることに決めている。

もちろん日本人同士なら日本語を使ってかまわない。しかし会議の場に1人でも外国人が加わったら、必ず英語に切り替えるというルールである。