「フォーチュン500」の日本企業の中で、社長が日本人以外という企業の割合は、わずか3%です。さらに、日本企業の本社役員の中で、日本人以外の役員となると割合はさらに下がって、0.8%、各国と比べるとかなり低い値です。

組織を活性化するためには、多様なものを組織に取り込もうとする戦略が重要です。そのために、日本企業はもう少し、組織における「多様性」を推進してもいいのではないでしょうか。

最近、ある経営者の方から、日本で学ぶ外国人留学生の採用を積極的に行っている会社が増えてきつつある、と伺いました。人材を国際化することは、組織における人材の「多様性」を確保するための近道です。ただし、多様で優秀な人材を採用したとしても、「彼らのキャリアパスをしっかりと考えてあげなければならない」というのが、私からの提言です。

2つ目は、さまざまな国から人材を採用しても、採用される側からすれば、「完全に同化することは難しい」というのが本音としてあります。ですから人事担当者は、いかに「違い」や「差異」をポジティブに組織に取り込んでいくかという視点が必要となります。

個人的な経験から言えば、先ほどのインドのソフトウエア会社が、南米に拠点をつくる際に、インドと現地社員の労働観の「違い」を痛切に感じたことがあります。ブラジル人であれ、アルゼンチン人であれ、“週末に喜んで仕事をしない人たち”は、決して悪い人でも怠け者でもないと、私が理解できるまで、時間がかかったのです。

3つ目は、人材の質や人事的な慣例が国ごとに違うのだから、人事政策も国ごとに違って当然であるということです。残念ながら、日本企業の中には、各国別に人事政策を柔軟に変えている企業は、ほとんどないと理解していますが……。

4つ目は、特に企業に雇用された外国人は、小さなもてなしを喜び、それを「歓迎されている」と捉える傾向があるということです。これは、世界的なインドのIT企業である「インフォシス」の創業者から伺った話です。同社の役員会議では、国籍の違う役員用にインド料理以外の料理を出していて、それが大変、好評を博しているということです。食事のメニューが選べるという些細な話かもしれませんが、外国から来た人間としては「自分のことを考えてくれている会社だ」と思うのです。

ちなみにインドのIT業界のトップ300人を調査したところ、海外、特にアメリカに長期滞在した経験を持つ人は、170人。彼らのような人材がインド企業の活性化に果たした役割は、非常に大きいものがあります。2カ国の文化を理解できる人を「バイカルチュラル」と呼びますが、たとえば日本とアメリカ、日本とブラジルの両方を知る人を積極的に採用してみるのです。人事政策的な観点で言えば、アメリカやブラジルのように日系2世、3世の多い国から採用することも、企業が“多様化に慣れる”ためには、いいのではないかと思います。