スマートフォン時代は、クラウド時代でもある。サービスの重要な機能はその多くがクラウドにあり、データはクラウド側で収集・管理される。端末がその重要な窓口となる以上、端末のシェアを失うということは、事業機会の多くを失うことでもある。
特に「ドコモiPhone」でスマートフォンデビューを果たすような利用者は「プリインストールされているアプリ」の利用が中心だろう。そこにドコモがメール等の基本機能も含めてサービスを提供できるか。前述のspモードの課題を考えると、正直厳しい。
通信事業者がiPhoneを担ぐということは、完全なる「土管」になることを意味する。そして「土管」の先にあるクラウドベースのサービスの多くは、海外事業者が握っている。かつてパソコンがWindowsに席巻され、国内のIT産業が崩れた時を超える「新たな敗戦の再来」の姿を想像するのは、私だけではないはずだ。
だからこそ通信事業者には、クラウド時代に国内事業者が活力を取り戻すような施策を、打ち出してほしい。
ベンチャーキャピタルの運営など、「種まき」にはすでに着手しており、その意義は大きい。しかし今後は、流通や自動車等、日本の得意分野の情報化を進める「触媒」としての役割を、通信事業者が改めて果たすべきだ。
スマートフォンが単なるオモチャに終わるのか、あるいは日本社会に真の情報化をもたらすのか。そしてその時、日本の産業界に望ましい状況がもたらされているのか。「ドコモiPhone」が分水嶺となるのかもしれない。
※1:総務省「通信利用動向調査」(2012年)によると、「スマートフォンでインターネットを利用している人」の都道府県別の比率では、上位は神奈川県(38.5%)、東京都(37.7%)、下位は秋田県(21.8%)、岩手県(21.9%)だった。
※2:スマートフォンで「docomo.ne.jp」のアドレスを利用するためには「spモードメール」を利用する必要がある。だが、さまざまな不具合が報告されているため、新サービス「ドコモメール」を提供予定。2012年10月の発表では13年1月の予定だったが、延期が度重なり、現在の提供予定は13年10月下旬。