NTTドコモの“一人負け”が続いている。同社は5月、自ら「ツートップ」と称したソニー製「Xperia A」とサムスン電子製「Galaxy S4」の販売を開始。好調ではあるものの、番号ポータビリティ(MNP)を利用した他社への流出者は、4月よりも5月のほうが多かった。

ドコモは主要3社中唯一、iPhoneを販売していないことが最大の理由だが、それ以外に2つ考えられる。

1つは、「月々サポート」の利用者の転出。2年間の契約を条件にスマートフォン(スマホ)の価格から割引を受けられる同サービスは、開始から2年が経過。“2年縛り”を終えたユーザーが、他社へ流出していると考えられる。

2つ目は、マーケティング戦略のミスマッチだ。ドコモは10年以上の契約者や初めてスマホを購入するユーザーに対し、「ツートップ」の価格を割り引いている。だが、前述の通り、流出の中心は、すでにスマホを持っている層である可能性が高い。

流出を抑えるため、ドコモは今秋にもiPhoneの販売を開始するのではないかと私は考えている。そうなった場合、業界地図はどう変わるのか。

KDDIの好調は続くだろう。同社は現在、MNPによる転入数で20カ月連続首位を維持。最大の要因は「スマートバリュー」にある。固定電話と携帯電話の両方を契約することによって割引が受けられるサービスで、1~3月で見ると、同社の加入者純増数の半数以上に貢献したと推測される。ドコモは規制によりNTT東日本・西日本との一体営業ができず、ソフトバンクも積極的に追随していないため、KDDIにとって強力な武器となっている。

ソフトバンクは相対的に大きな影響を受ける可能性がある。同社の差別化要因がなくなってしまうためだ。6月、米携帯電話3位のスプリント・ネクステルの買収が承認されたが、これは国内での成長に限界があるという同社の判断からだと考えられる。実にまっとうな戦略であり、積極的に評価したい。

ドコモはどうか。iPhone参入は他社と同じ土俵に立ったことにすぎない。近年、EC(電子商取引)など新規事業を強化しているが、今のところ差別化にはなっていない。打開策を示せなければ、流出の拡大は続くだろう。

(構成=プレジデント編集部)
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