一方、現在でもNTTドコモの収益を支えているのは、いまだスマートフォンへ移行しない、保守的なフィーチャーフォン利用者、つまり「ガラケーユーザー」だ。こうした利用者のマイグレーション(スマートフォンへの移行)をどうするか。それに伴い、事業をどのように再構築するか。これがNTTドコモの重大な命題なのだ。
営業施策だけの話ではない。たとえば、フィーチャーフォンとスマートフォンでは、電波のつかみ方や通信状態の維持の方法など、インフラの使い方が大きく異なる。またスマートフォンの高度化に伴い、回線容量の向上も求められる。このためインフラを作り直していかなければならないが、スマートフォンの普及速度が想定を上回っており、なかなかインフラの置換が追いつかない。近年、大規模障害が発生したり、回線品質に不満を抱いたりする利用者が少なくないのは、移行の難しさの一面を表している。
サービスやアプリケーションも大きく異なる。キャリアメールと公式サイトしか使ったことのない人にとって、たとえばGmailのアカウントを取得するということさえ、そもそも「意味不明」であろう。パソコンを使い慣れた人にはそうした利用者の姿は想像できないかもしれないが、これが日本のマジョリティの現実だ。彼らを相手にしてきたNTTドコモは、それゆえにspモードというプラットフォームを用意し、移行の促進を目指してきた。しかし、そのspモード自体が、「ドコモ品質」とはほど遠い、不安定な代物となってしまった(※2)。
地方部がスマートフォンを「使う理由がない」のに対し、都市部の状況は異なる。多くの人はパソコンを日常的に使い、通勤・通学途中に端末を触る時間がある。地域を限定してインフラ投資を行うことで、「つながりやすさ」にはドコモとそれ以外の差は小さい。そんな都市部の人たちにフィットしたのが、iPhoneだった。つまりNTTドコモは、都市部を中心に、他事業者の草刈り場となっていた。それが、ここ数年の趨勢であった。