勧告の「空振り」を責めるのはだれか

10月16日未明に東京都大島町(伊豆大島)で豪雨が発生し、同町で死者・行方不明者41人(10月31日現在、消防庁資料)に上る大きな被害が生じた。私は自然災害の研究者として、またしてもこれまでに繰り返された災害が起こってしまった、という印象を持つ。

今回の災害では、大島町が災害発生前に「避難勧告」をはじめとする避難に関わる呼びかけを積極的に行っていなかったことが報じられている。

今回の場合、気象庁は10月15日夕方には「大雨警報」と「土砂災害警戒情報」、さらに16日0時台には伊豆大島付近に特化した「府県気象情報」を発表し、その後3回にわたり「記録的短時間大雨情報」を出していた。気象庁や東京都からは大島町に対して電話などでの直接的な呼びかけもあった。

このような状況下で、避難に関連する情報が一切出なかったことは「残念」と言わざるを得ない。しかし、豪雨災害時の発生前に避難勧告が出なかったという現象自体は「よくあること」であり、大島町が他の市町村に比べ特別に対応を怠っていたとは思わない。大島町に特殊な問題があり、その責任を追及する、といった姿勢では今後の防災対策にはつながらないと筆者は考える。今後の防災対策のために重要なことは、このような現象はどこでも起こりうるとしたうえで、今回の災害では具体的にどのようなことがあったのかを記録、共有することだろう。

大島町は災害前に避難勧告を出さなかった理由として、「夜間の無理な避難で被害が拡大することを恐れた」という説明をしている。この認識自体はおかしくはない。たとえば2009年の兵庫県佐用町の水害では、避難先に向かおうとして13人が死亡している。筆者の調査では、2004~11年までの豪雨災害の犠牲者514人のうち、1割は何らかの避難行動を取ったにもかかわらず遭難した犠牲者である。