最近は新設された「特別警報」(※2)に関心が集まっているが、それ以前にこれだけ多くの情報が用意されている。特別警報は「最後の背中押し情報」ともいえ、これを待たず、早めに行動を起こすことが大原則である。これらの情報はいずれも、気象庁のホームページで確認することができる。行政機関や検索サイトなどでは、各種情報の発令をメールで知らせるサービスもある。
また、「避難」は「避難所への移動」とは限らないことに注意してほしい。
「避難してください」ではなくて「身の安全を図ってください」といった言い回しがよく使われているのはこのためでもある。避難所に行くことに限定せず、身に迫る危険から少しでものがれてください、というのが避難勧告などの本来の意味である。
安全を確保するための具体的な方法は、災害の種類や現地の地形などによって変わる。たとえば浸水災害の危険がある地域で、すでに浸水が始まってしまっているような場合は、建物の2階以上に退避すること(垂直避難)も実質的な避難となる。一方、土砂災害の危険性がある地域では、木造家屋は損壊する危険性が高いので、垂直避難は推奨できない。土石流などが流下する谷筋や谷の出口から、直角方向の少しでも高所に移動する、というのが切迫した状況での次善の対応策となる。
特に都市部は、堤防などのハード整備が進んだことにより、相対的には豪雨災害に対する安全性は向上している。しかし、日本の都市の多くは、洪水の危険性のある低地に立地しており、中小規模の水害が起こりにくくなってはいるものの、地形的に危険性のある場所であること自体は変わらない。身近な地域ではどんな災害が起こりうるのかを、日ごろから少しでも良いので考えておくことが、いざというときに役立つことになるだろう。
※1:今年3月、静岡大学防災総合センター牛山研究室は「防災気象情報に関するアンケート」を行い、浸水想定区域内の居住者(74人)とその他(112人)の計186人の静岡市在住者から回答を集めた。報告書はウェブサイトで公開されている。
※2:気象庁はウェブサイトで特別警報が対象とする現象として「東日本大震災における大津波」「我が国の観測史上最高の潮位を記録した『伊勢湾台風』の高潮」「紀伊半島に甚大な被害をもたらした『平成23年台風第12号』の豪雨」などと例示している。
牛山素行
1968年、長野県生まれ。信州大学農学部森林工学科卒業、岐阜大学大学院連合農学研究科博士課程(信州大学配置)修了。京都大学防災研究所助手、東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター講師、岩手県立大学総合政策学部准教授などを経て、現職。著書に『豪雨の災害情報学』などがある。