「ドコモ土管化」なら産業界は総崩れか
そんな後退局面にあるNTTドコモがiPhoneを投入できるのか。投入したとして、効果や意味はあるのか――いささか食傷気味だったが、いよいよ結論が出そうだ。
理由の1つは、投入に向けたハードルが下がりつつあること。アップルは自社端末を導入する通信事業者には販売ノルマを課す。NTTドコモの場合、シェアや後発であることを踏まえ、当初は全契約数の半分近くに匹敵する数字を突きつけられていたようだ。これは事実上、「ドコモ利用者は全員iPhoneにすべき」と言うに等しい。
しかし、この状況は緩和されている。そもそもアップル側がこうしたノルマを突きつけた背景には、昨年9月に発売した「iPhone5」の販売不振があった(特に欧州市場で苦戦していた)。だがこのところ、販売状況が回復している。また競合であるサムスン電子の「Galaxy」シリーズも販売不振にあり、アップルは次期モデルで一気に攻勢をかけるようだ。部材を供給するメーカーの活気も、それを裏付ける。アップルの都合としては、ドコモに無理強いしなくてもよくなったし、サムスン電子のシェアを削げればそれでいい、ということだろう。
では、iPhoneの投入が、ドコモ復活の起爆剤になるのか。これは賛否両論あるだろう。確かに、やや遅きに失した感がある。特に都市部では、「ドコモiPhone」を期待した潜在顧客はauに流れた。今後この市場を奪還するには、auの回線状況に不満を抱く利用者の買い換えを待つ必要がある。また、ツートップ戦略によって、自ら草を刈ってしまったとも言える。これは戦略の失敗と言わざるを得ない。
しかし前述の通り、地方部にはスマートフォン移行から取り残された人たちが存在する。こうした保守的な利用者に安心感(=丁寧に説明すれば使い方を一応理解できる状況)を与えられるのは、現行のスマートフォンでは、iPhoneしかない。まるで富士通の「らくらくスマートフォン」のお株を奪うようなものだが、年老いた両親を抱える私自身の、偽らざる印象だ。
商機は、そこにある。あとは、低廉な料金プランの提供や手厚いサポートなどを提供できるかが、ドコモの成否を分けるだろう。だがこれは、素直に喜べることなのだろうか。