聴き取り下手を変える3つの力
ここで、この4つの「聴き取り下手」のどのタイプにも絶対的に有効な策を紹介しましょう。それは「傾聴力」をアップさせることです。「傾聴力」とは次の3つの力です。
1つ目が感情移入して「聞く」、感情移入の力。2つ目に「聴く」力、これは感情に振り回されずにコントロールしながら相手に無条件の関心を向ける感情コントロールの力です。そして3つ目が、上手な質問をして「訊く」、質問技法のことです。
1つ目の感情移入の力とは、相手の立場になって考えることです。まず、相手が今から五分前、10分前に、どんな場面にいたかを動画を見るようにイメージして、「さて、その場面からすると、相手は今どんな気持ちでいるのだろう?」と考えてみましょう。これは、カウンセリング学で「共感」とも呼ばれる作業です。
こうやって考えると、例えば、今目の前にいる部下に仕事をたくさん言いつけたとして、彼が「できるとは思うのですが……」と答えを渋っているのを見ると、「そうか、彼の家では昨日不幸があったばかりだ。きっとまだ、そのことで心がいっぱいなのだろう。よし、時を改めよう」と渋る理由に思い至ります。
すると、適切な励ましや称賛、承認の言葉が自然と口をついて出てきます。
感情移入が上手な人は「イメージする力」が強い人ですが、相手の立場を具体的に思い描く訓練をいつも意識的に行っていると、次第にイメージする力が上がっていきます。
2つ目の感情コントロールについては、人はよい感情よりも、否定的感情を持ちやすく、心に否定的感情があるときには、相手の話が耳に入らない。そして、人は否定的感情こそ、人に聞いてほしい。これが人間の心理の原則だということが挙げられます。
社内で部下や同僚と話すとき、最もコントロールが必要な感情が、自分の中の「怒り」や「責め」の気持ちです。