有利子負債は、利払いを伴う負債のことで、長・短期の借入金や社債などがある。有利子負債が多いということは、運転資本・設備資本に必要な資金が不足していることを表し、返済負担が経営の足枷になるほか、金融機関からの評価も下がって、いざというときの融資で不利な状況に立たされることがある。
しかし、有利子負債を削減すれば、将来の利払いを節約できるほか、定期的な元本の返済額を減らすこともできて、運転資金の確保が楽になる。パナソニックは前期第3四半期時点で1兆5196億円の有利子負債を抱えており、少しでも身軽になろうと、今回の持ち合い株の売却に踏み切ったようだ。
もっとも、株価が取得時より値下がりしていれば、逆に売却損が生じることになる。売却によって一定の資金を手にすることができて、一時的に資金繰りが楽になるかもしれない。しかし、売却損が生じることで、会社全体の利益を押し下げることになってしまうのだ。
昨年秋から多くの企業で株価が上昇しており、保有する持ち合い株の時価が原価を上回るようになっているものと考えられる。今後、パナソニックのように持ち合い株を売却する会社が増えてきても、不思議ではない。
ただし、そうめったにないとは思うが、持ち合い株の売却が利益操作の道具となる可能性があるので、注意を要する。目先の最終利益をよく見せようと、含み益を抱えている持ち合い株を売却するケースがあるのだ。
もちろん今回のパナソニックのケースは財務体質の強化を目指したものとして前向きに評価すべきだろう。