パナソニックが2013年3月期中にトヨタやホンダ、新日鉄住金などの保有する株の一部を売却したことがわかった。その売却額は1000億円に及ぶという。

保有株を売却することによって、どんなメリットがあるのだろう。会計処理のプロセスをたどりながら検証したい。

報道によると今回売却した株式とは、取引安定化のために所有していた株式、いわゆる「持ち合い株」だという。持ち合い株は、互いの取引関係を長期間にわたって安定的に維持することを目的に、それぞれ取得した相手の会社の株式を指す。株式を保有することで相手の会社の経営意思決定に参加できるほか、互いの信頼を損なうような行動がとりにくくなるため、双方にとって良好な関係が維持されやすいという利点がある。

会計上、この持ち合い株は貸借対照表(B/S)の借方にある固定資産の「その他有価証券」に計上される。持ち合い株は基本的に将来にわたって保有する性質のもので、短期的に売却する予定がないからだ。

原価100億円で取得したものが、決算日に時価120億円に上昇した持ち合い株があったとする。期中は「その他有価証券100億円」のものを決算日に時価で評価し直し、借方「その他有価証券20億円」、貸方「その他有価証券評価差額金20億円」(純資産)を加える。そして、決算日の翌日には元の形に戻す。これを「洗い替え」という。なお、ここでは税効果については省略して考えている。

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持ち合い株の売却の会計処理の流れ

では、実際に120億円で売却した場合はどうなるか。

借方に「現金120億円」、一方の貸方には「その他有価証券100億円」「投資有価証券売却益20億円」と仕訳する。実際に売却した金額と取得原価との差額につき、投資有価証券売却益として利益が確定し、損益計算書(P/L)に記載され、配当の原資などに充てられる。

ただし、必ずしも配当に回されるわけではなく、売却によって得た120億円はさまざまな用途の資金として活用される。パナソニックの例では、その大半は有利子負債の返済に充てられたものと考えられる。