1990~:女性の社会進出とIT化が加速
86年に施行された男女雇用機会均等法を経て、90年代は女性の社会進出が目立ちはじめる。「お茶汲みの“女の子”」扱いから一転、総合職として名刺を持つ女性が増加。同時に女性向けのビジネスマナー書が売れに売れた。
職場では国際化とデジタル化が加速し、出版のキーワードは「語学」と「IT」に。そこで、デジタル時代におけるコミュニケーション方法と、女性の職業の花形的存在である、「秘書」(マナーに明るい)、「スチュワーデス」(語学に長けている)に注目が集まったのだ。
「80年代後半からOLが腰掛けではなくなりましたが、90年代半ばでもまだバブルの名残があり、女性にとって働くことは“義務”ではなく“権利”。『働くわたし』を夢見ており、“前向き”“輝く”というワードが頻繁に使われています。仕事への意識は、現在とは大きく異なります」(土井さん)
しかし、女性たちの夢とは裏腹に、90年代中盤以降、社会の様子は一変する。
「景気が一気に落ち込んだ影響で、男女問わず社員の視点が内向きに変化しはじめるのがこの頃。会社の将来に不安を感じ、会社のため、社会のためというより、家族や自分のために働くという視点が、現在まで続いています」(高城さん)
バブル崩壊以後、マネジメント側の人間も自らのキャリアの先行きに不安を抱きはじめ、起業ブームが起こる。
90年代は“会社”に対する思考の転換期でもあった。
●女性の憧れスチュワーデスに学ぶ、OLマナー
新版『JALスチュワーデスのいきいきマナー講座』
JALアカデミー株式会社編・著/日本能率協会マネジメントセンター
当時の女性たちの憧れ、接遇のプロ、JALスチュワーデスに学ぶビジネスマナーのあれこれ。会社でのお茶の入れ方、言葉遣い、笑顔のつくり方、身のこなし、果ては休暇の上手な取り方まで指南。OL向けお仕事マナー教習本。
●デジタル時代のビジネスマンに贈る、マナー集
『デジタルマナーの達人』中谷彰宏著/小学館
携帯電話、電子メールが普及した90年代後半発行。デジタルツールの多機能化において、忘れてはならない、使用者としてのビジネスマナーを提唱。「10の機能を覚えるより、1のマナーを覚えよう」は、現代でも充分通用。
出版コンサルタント、「ビジネスブックマラソン」編集長。1974年生まれ。慶応大学卒業後、Amazonのバイヤーを経て、2004年、エリエス・ブック・コンサルティング設立。
セレブレイン代表取締役社長 経営・人事戦略コンサルタント 高城幸司
1964年生まれ。同志社大学卒業後、リクルート入社。96年、独立・起業情報誌「アントレ」創刊。2005年、独立し、セレブレイン代表取締役社長に就任。