女性差別を解消していくには、なにが必要なのか。性問題の解決に取り組んでいるホワイトハンズ代表理事の坂爪真吾氏は、「ツイッターでは『#私たちは女性差別に怒っていい』というハッシュタグが話題になった。しかし『私たち』という言い方を続けると、『男が許せない』『女性差別が許せない』という怒りをたぎらせるだけで終わってしまう」と指摘する――。
※本稿は、坂爪真吾『「許せない」がやめられない』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
「#私たちは女性差別に怒っていい」というハッシュタグ
2018年8月、東京医科大学が入試で女子や浪人年数の多い受験生の得点を一律に下げていたことが発覚した際に、ツイッター上で「#私たちは女性差別に怒っていい」というハッシュタグが拡散された(※1)。
※1:当時河出書房新社の編集者であり、現在はエトセトラブックス(@__etcbooks)代表取締役の松尾亜紀子によってつくられたハッシュタグとされている。
女性差別に関する炎上は、特定の対象や表現に対して、女性たちが「それは女性差別だ」と指摘し、怒りの声を上げることから始まる。
ここで用いられるのは、「主語の全体化」である。それは特定の個人に対する差別ではなく、私たち=女性全体に対する差別である、という言い回しで、主語を個人から女性全体へと変換される。
こうした主語の全体化は、個人の怒りに対して一定の社会性を付与することができる。