不動産や資源のほか、「海外に拠点のある会社」が強い
これから伸びる会社はどのような会社か。答えは単純で、インフレに強い会社です。漠然としていますが、それが基本中の基本です。
不動産や資源関連、金融だけではなく、たとえば、事業拠点のほとんどをアメリカなどの海外に置いているような企業の場合もインフレには強い。なぜなら、日本国内のインフレの影響をあまり受けないからです。
もうひとつは、一般消費者みんなが必要とするものをつくっている会社です。同じような観点で、コンビニエンスストアなどの小売店は、生活必需品を売っているため、総じてインフレ対応力があります。今後、さらにインフレが続くとしても、こうした業界はなんとか乗り越えるのではないかと思います。
一方で、少しばかり値が張る嗜好品的な商品を扱うところは総じて厳しくなるでしょう。インフレ時代の消費者心理は贅沢から離れ、生活必需品にシフトしますから、プチ贅沢を売り物にする業態は敬遠されます。
同じ小売業にしても、どういった商材を扱うかで、会社の業績も大きく違ってきます。そこをよく考えて、伸びる業界や企業を見極めるべきでしょう。
先見の明がある企業はすでにインフレ対策をしていた
現在のような難しい状況を予見していた企業もあります。一例を挙げると、ニトリです。10年前のニトリを思い返すと、店舗には、激安の家具がずらりと並んでいました。激安品しかなかったという印象すら持っています。しかし、現在の店舗を見ると、10万円、20万円といった価格帯の商品が実に多い。
かつて中心的な商品であった激安品は今、ネットを通じて販売しており、店舗では、もっと高価なものを売っている。ニトリの似鳥昭雄会長はマクロ経済の読みが鋭いことでも有名な方です。
インフレで物価が上がる世の中では、良いものをより高く売っていくしかない。だから、生活必需品に近い安い価格帯の家具はネットで販売し、富裕層には店舗でより良いものをより高く売る。そういう戦略を、とうの昔に実践しているのです。
ユニクロはさらに業績絶好調の企業ですが、ここにも似た構図があります。20年ほど前のユニクロの商品には1000円台のものが珍しくなかった。1990円といった価格ですね。しかし、そうしたラインナップは今のユニクロにはあまり見当たらなくなりました。
中心になっているのは3990円、4990円、5990円。この価格帯が高いという人はGUに低価格帯の商品を揃えていますよ、と。そういう戦略になっています。
ファーストリテイリングの柳井正会長もまた、インフレで物価が上がるのがわかっていたから、とうの昔に戦略を切り替えていた。ニトリやユニクロのように、経営者に先見性があり、経済の実態を予測する力がある企業は、すなわちインフレ対応力にも富んだ会社ということができます。
一方で、マクロ経済の動きを見て新たに必要となる戦略に気づくことができる経営者が日本にどれくらいいるでしょうか。低価格路線をひた走る外食産業や、プチ贅沢な商品のラインアップを改めようとしない小売りなどを見ると、この先が心配になるのも事実です。
迎車料に加えて別途手配料金がかかるタクシー予約も
タクシーの配車予約や、優先配車を、通常の迎車料金に上乗せする形で設定しているタクシーアプリもあります。雨でどうしてもタクシーに乗りたいが、なかなかつかまりそうもない。そんなとき、運賃や迎車料とは別に手配料を支払うと予約や優先的な配車が可能になるというものです。
インフレの時代は少しでも無駄な出費を避けたいものですが、どうしてもタクシーに乗る必要がある人は別途手配料も出すわけです。これも、インフレ時代の消費者ニーズへの対応法のひとつ。
ニトリやユニクロの例も含め、インフレ時代の消費者の動向に合わせたビジネスにシフトしていかなくてはいけないということです。逆に言うとそれができない会社は、ビジネスのインフレシフトが着々と進められていく世の中から、気がついたときには振り落とされているのかもしれません。
インフレは継続。外国企業も投資の対象にすべき
さて、現在のインフレは、あとどれくらい継続するのでしょうか。日本の金融政策次第ですから一般消費者にはどうにもできないことです。
仮に金融緩和政策が変わらないという前提条件を付けると、インフレはまだまだ継続します。多くの識者が指摘しているように、仮に金融政策を転換したとしても、正常化するのには20年くらいかかるという見方は多い。実際に20年かかるかどうかはともかくとして、この先、2年や3年で状況ががらりと変わる可能性は低いと思ったほうがいいのではないでしょうか。
そうなると、今後への対策においては、インフレシフトということを最重要のキーワードに据えて、すべてのポートフォリオを見直すことが、基本的なセオリーになってくると思います。
投資の観点から見れば、インフレには円安が必ずセットになります。なぜなら日本だけがまだ金融緩和を続けているのですから、必ず円安になる。それを考慮すれば、日本の企業ではなく外国の企業に投資をすることも考えたほうがいい。そのほうが合理的です。
私は日銀のバランスシートや、日銀の信用を担保している政府の財政がこれで大丈夫だと見なされるまで、円安が進むと考えます。金融政策を改め、企業が倒産するのも構わずに金利を上げて、増税もしていく。そのような大転換があれば別ですが、日本の政治環境でこうした決断が下されるとは到底思えない。
だからこそ、インフレシナリオがもっとも濃厚な将来予測であり、ビジネスも投資も、そこに見合ったシフトをしていく必要があるのです。

