新NISAは、どれに投資をすればいいのか。ソニーフィナンシャルグループ、チーフエコノミストの渡辺浩志さんは「トランプ政策は不確実で、米国経済・株式市場の短期的な見通しは明るいとは言えない。だからといって、S&P500がダメとは言えない」という――。
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トランプ政策によって米国経済が悪化する可能性は大

日経平均株価は平成バブルの最高値を更新するまでに、実に34年を要した(その間に米S&P500株価指数は20倍となった)。

その苦い記憶から、多くの個人投資家は日本株の上昇に懐疑的だ。結果として、投資熱が高まるなかでも、個人マネーの多くは米国をはじめとする海外株式やファンドへと流れていることが図表1からわかる。

【図表1】個人投資家のマネーは海外株へ向かう

そこで気になるのが米国経済の行方だ。トランプ政権発足以降、米国では企業景況感や、消費者信頼感などのソフトデータの悪化が続いている。

それらに共通するのは、インフレと雇用の見通しが悪化するなかで景気見通しが急落している点であり、家計や企業が関税によるスタグフレーション(景気が悪化しているにもかかわらず、物価が上昇する現象)を警戒する様子が窺える。

こうしたソフトデータの悪化は、民間雇用者数や小売売上高などのハードデータにも波及し始めている。図表2に示すように、米国の実質GDP成長率は消費者マインドに約3カ月遅れて動く傾向がある。現時点では景気後退(大幅なマイナス成長)に陥る可能性は低いが、成長鈍化は不可避の情勢だ。

【図表2】消費者マインドの悪化がGDP成長率の悪化に直結