トラブルを起こす問題社員に会社はどう対処すべきか。弁護士の西脇健人さんは「本人と話し合って円満退職してもらうのが理想だが、もし話がこじれても適法に解雇できるよう、物的証拠を残すことが必要だ」という――。

※本稿は、西脇健人『「円満退職請負人」が教える! 全員が幸せになる「トラブルなし」で問題社員に1ヶ月で辞めてもらう方法』(翔泳社)の一部を再編集したものです。

退職願を差し出す人
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万が一のために「保険」をかけておく

大前提として、問題社員には話し合いの上、合意で円満退職してもらうことを想定しています。しかし、どうしても合意に至らない場合は、解雇することも想定しておかなくてはなりません。

ステップ1では、万が一解雇せざるを得ない状況になった時に備えて、少しでも適法に解雇手続きができるように「きちんと解雇事由に関する証拠を積み重ねておく」作業をします。

あくまで目的は「円満退職」ですが、話がこじれてしまって合意に至らない時のための保険とも言えます。

では、その「証拠」とは何なのか、見ていきましょう。

会社側が指導改善したという「証拠」

たとえば、問題社員が「業務指示に従わない」「遅刻・早退を繰り返す」などの行動を取っていたとします。

しかし、これまで見てきた通り、それだけでは裁判所は解雇事由として認めてくれないケースが多いのです。

そこで、「業務命令・業務指導」として、具体的に会社側が指導改善をしたという証拠を残しておく必要があります。

その具体的な証拠というのは、次のようなものです。

1 口頭注意の記録
2 懲戒処分
3 始末書

これまで、ミスや問題行動があった時、始末書を書かせたり、注意をして記録に残したことはありますか?

さらに、もう少し重い懲戒処分のひとつである「けん責処分(軽度の規律違反に対する厳重な叱責)」を出したことがありますか?

私が企業側の退職代行サービス「Resgent(リスジェント)」の現場で経営者の方にそのように聞いても、特に中小企業の場合は「一度も出したことがないです」という会社のほうが断然多いです。

本当に問題行動が多いのであれば、今からでも遅くありません。懲戒処分など適切な処分をして、問題行動があるという証拠を積み重ねていきましょう。