物価上昇で起こる「見えにくい増税」の正体
【安田】今年7月に予定される参議院選挙に向けて、各政党の動きが活発になってきていますね。特に大きなテーマとなっているのがインフレ対策で、減税をすべきだという声も多く聞かれるようになっています。
【西田】そうですね。でも、実際のところ、選挙の争点としてどうなんでしょうか。今は各党とも「生活が苦しいから税を軽くすべきだ」という論調が主流で、特に野党は軒並み減税を政策に掲げています。そうなってしまうと、各党同じようなことを言っているので、減税がもはや争点にならなくなっている気もしたり……。
【安田】そもそも財政や経済の設計からすれば、本来、減税ってかなり慎重に扱うべき話ですけどねえ。選挙前だからといって、「減税=善」とあまりに単純化されているのも問題かな、と私は感じています。特に消費税は景気変動にも強い非常に安定した税ですから、慎重な議論が必要なテーマなのですが。
【西田】ええ。僕も短期的な景気刺激や物価対策を考えるのであれば、定額給付や所得税・住民税の減税、控除調整などをワンショットで行うほうが筋がいいと思います。消費税は拙速に下げてしまうと、政治的に元に戻せなくなる可能性がある。安倍政権が2度の引き上げを行えたのは、非常に安定した政権基盤があったから。例外的な状況だったんです。そのあたり、争点として「減税」が差別化できていないからこそ、かえって議論が軽視されがちになっているかもしれませんね。
【安田】ええ。税制は社会全体の経済行動に大きな影響を与えますから、「いずれは戻す前提で下げる」というのはかなり非現実的です。
【西田】そうした税制の構造を無視して、「今だけ楽になる政策」が選挙で支持されてしまうと、制度全体の持続性が損なわれますよね。「やった感」や「下げた実績」だけを争って、先のことは考えないような政治はいかがなものか。
【安田】減税の議論は財政、制度、将来世代への負担など、社会の全体の設計とリンクして深める必要があります。だからこそ、政党や政治家には「減税の先に何を見ているか」を語ってほしいですね。
【西田】ただ、それならどうすればいいのか?ということですが、まずは今の喫緊の課題がインフレ対策であることは確かだと思います。実際の数字として物価高になっているだけではなく、生活感覚としての苦しさがいよいよ強まってきていますから。
【安田】ここ数年、日本でもようやく物価が上がってきたということで、「デフレ脱却」や「経済の好循環」みたいなフレーズも使われるようになりました。インフレという言葉だけが独り歩きすると、「何となくいいことが起きている」と錯覚してしまう人もいるかもしれません。しかし、今起きているインフレは必ずしも歓迎すべきものではありません。日本のインフレは典型的な「コストプッシュ型」であるからです。
【西田】つまり、需要が旺盛になって価格が上がっているわけではなくて、エネルギーや原材料の価格が高騰した結果、企業がやむなく値上げしているという状態ですね。しかも、物価上昇が賃金上昇とセットになっていない。
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