日本の景気はこれからどうなるのか。伊藤忠総研主席研究員の宮嵜浩さんは「内需株が好調で、日経平均株価は一時4万円台に戻った。トランプ関税や金利上昇の影響が懸念されているが、日本経済の底堅さを示す『注目のデータ』がある」という――。
前週末に比べ、一時600円超値上がりした日経平均株価を示すモニター=2025年6月30日午前、東京都中央区
写真=時事通信フォト
前週末に比べ、一時600円超値上がりした日経平均株価を示すモニター=2025年6月30日午前、東京都中央区

5カ月ぶりに日経平均4万円台を回復

2025年6月、日経平均株価は5カ月ぶりに4万円台を回復して4万852円54銭まで上昇した。昨年7月に記録した史上最高値4万2426円77銭には及ばないものの、一時3万1000円を割り込んだ今年4月の安値から、わずか3カ月足らずで33%もの急上昇である。

株価上昇のけん引役は、昨年7月の高値更新時とは大きく異なっている。昨年は、自動車や機械、ハイテクに代表される輸出関連銘柄(外需株)が日本株全体を大きく押し上げた。

日経平均株価を構成する225銘柄のうち、海外売上高比率が相対的に高い50銘柄で構成される「日経平均外需株50指数」は昨年7月にかけて、同様に国内売上高が高い50銘柄による「日経平均内需株50指数」を上回るパフォーマンスを示した。

しかし2025年に入ると、米国のトランプ政権による輸入関税の強化、いわゆる「トランプ関税」に対する警戒感から「外需株50指数」は総じて低調に推移しており、4月以降の戻り相場でも急落前の水準を取り戻せていない。

一方、「内需株50指数」は年明け以降も堅調に推移して、年初来高値を更新。4月以降の日本の株式相場が、内需株中心の上昇だったことを示している。(図表1)

【図表1】日本株の推移

内需株が株式相場を牽引

日本の内需の好調ぶりは、経済指標からも確認できる。2025年1~3月期の実質国内総生産(GDP)の成長率は前期比年率で▲0.2%と低迷したが、重要項目別にみると、内需は+3.3%と増加しており、輸出の▲2.2%とは対照的な結果となった。

個人消費(+0.6%)や住宅投資(+5.6%)、設備投資(+4.4%)といった民間最終需要は総じて好調だったが、なかでも設備投資は4四半期連続の前期比増加を記録しており、好調ぶりが際立つ。

先行きについても、設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)と建築着工床面積(民間非居住)がともに1~3月期に上向いており、設備投資が4~6月期も引き続き堅調に推移した可能性を示唆している。

以上を踏まえると、今年4月以降の日本株の好調は、設備投資を中心とした内需の強さに裏付けられた動きと評価できる。

設備投資比率が「平成バブル期以来」の17%超え

歴史的に見ても、現在の設備投資の好調ぶりは明らかである。設備投資の中長期的な趨勢は、GDPに占める設備投資の割合(設備投資比率)で確認することができる。

企業が生産した付加価値の多くを設備投資に振り向ければ設備投資比率は上昇し、逆に設備投資を控える局面では設備投資比率は低下する。