AI技術がどんどん進化している。脳科学者の茂木健一郎さんは「テクノロジーは日常をサポートしてくれる存在だ。『新しいことを試すなんて面倒くさい』という年配の人ほど積極的に使ってみてほしい」という――。

※本稿は、茂木健一郎『60歳からの脳の使い方』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

スマートフォンで音声認識を使用する男性
写真=iStock.com/Giuseppe Lombardo
※写真はイメージです

AIは日本人にとって「第三の黒船」になる

AI(人工知能)がいよいよ本格的に社会に実装され始めている昨今、60代以降の人こそ、ぜひテクノロジーをフル活用すべきだと僕は思います。

60代以降がAIを学ぶ重要性は、ご自身の脳のためだけではありません。なぜなら、今後、AIが日本人にもたらす影響は、「第三の黒船」と呼べるほど大きな転換点になるはずだからです。

これまで歴史上、日本人は二度の大きな外圧を経験しました。

一つ目は幕末、ペリー率いる黒船が江戸湾に現れたときです。この出来事は鎖国体制を終わらせ、日本を近代化への道へと押し出しました。

二つ目は第二次世界大戦の敗戦後、GHQによる占領統治です。これにより日本は民主主義を導入し、経済大国への道を歩みました。

脅威ではなく、チャンスと考える

そして今、私たちの前に現れているのが、第三の黒船とも言うべきAIです。前の二つとは違い、今回は軍隊ではなくテクノロジーが日本社会を根本から変えようとしています。

AIが及ぼす変化は、かつてのような政治や制度の変革にとどまらず、仕事、教育、日常生活のあらゆる場面に深く浸透していくはずです。生活の中でAIの影響をまったく受けずに済む人はほとんどいないでしょう。それほどAIの普及スピードは速く、社会全体に広がっているのです。

もちろん、AIを自分の人生や仕事にどう取り入れるかは個人の自由です。受け入れることを選ぶのであれば、積極的にAIを使いこなすことで、その恩恵を最大限に享受できます。

大切なのは、AIという黒船の到来を、脅威ではなくチャンスとしてとらえること。こうした考え方が浸透すれば、過去二回の黒船来航と同じように、日本は新たな成長の時代を迎えるでしょう。