高齢になっても若々しくいるためにはどうすればいいか。脳科学者の茂木健一郎さんは「年齢を重ねるほど、脳の司令塔である前頭葉の機能が低下しやすくなるので、意識的に鍛えることが重要だ」という――。

※本稿は、茂木健一郎『60歳からの脳の使い方』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

パズルで遊ぶ年配の男性
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シニアが励む「脳トレ」、実は意味ない?

脳を活性化させる習慣として、真っ先に頭に思い浮かぶのは「脳トレ」でしょう。認知症などを予防するため、日夜多くのシニア世代が「脳トレ」に取り組んでいるのは広く知られるところです。

でも、非常に残念な話ですが、最新の研究では脳トレをしても、認知機能にはあまり改善が見られないことがわかっています。

カナダ・ウェスタン大学の研究によると、脳トレゲームをした人としていない人では、記憶力や言語能力に大きな差がないことが明らかになっています。また、イギリスのアバディーン王立病院とアバディーン大学の研究でも、数独すうどくなどを解いても、認知機能の低下を防ぐ確かな効果は認められていません。

計算力や語彙力は鍛えられるが…

もちろん、脳トレそのものを娯楽として楽しむことは、悪いことではありません。ただ、脳トレは特定の課題を繰り返し行うことでその特定の能力だけを向上させるものです。計算力やパズル解答能力、語彙力などは向上するかもしれませんが、脳の機能自体を鍛える効果はないのです。だから、「脳トレをやっていれば、脳は鍛えられるのだ」と思うのは大きな勘違いだと言えるでしょう。

では、特定の部位に偏らず、脳自体を効率よく鍛えるにはどうすればいいのでしょうか。

私たちの脳には様々な役割を担う部位がありますが、60代以降の脳を鍛える上で重要な役割を果たすのが「前頭葉」という部位です。前頭葉は、感情や衝動をコントロールしたり、計画を立てたり、意思決定を行ったりといった高度な情報処理を司る、いわば脳の司令塔です。