長い言葉よりも短い「クギ」のほうが、よく伝わる

自分の理念を社員や部下に伝えるために、どれだけわかりやすく短い「寸鉄のクギ」に変えていくか、これもエグゼクティブの力の見せどころです。

ファーストリテイリングの柳井正社長は「景気低迷の中で先が見えない、と皆さん言いますが、きちんと頭を使って猛烈に考えれば、世界中にチャンスはいくらでもあります」と、ある会合で私を含めた数人に熱く語りました。

その彼の名言クギは、「No challenge,no future」(挑戦しなけりゃ、未来はない)というのです。

「挑戦しなければどうなるか?」「未来がない」とは、なんと短いけれど的を射たクギではありませんか。世界競争の「理念」を、短い言葉の名言クギに変えたのです。

また、父親の小さな家具店を引き継いで「世界のニトリ」に育てた、ニトリの似鳥昭雄社長も、「今必要なのは改善じゃない、改革だ」という名言クギを、皆に打ち続けています。

直接会ってお話を聞いたら、「チョロチョロとどこかを接ぎ木して変えてもダメですよ。もはやガラッと一からすべて変えるくらいの改革が必要だ」とのことでした。

そして、ジャパネットたかたの高田明社長。こちらもまた、実家の小さなカメラ店を継いで、現在の広範囲にわたる通信販売日本一のシェアを持つ、高いイメージづくりを達成した方です。佐世保本社に講演に招かれた私は、社内のあちこちに貼ってある紙を見てびっくりしました。「仕事は自己表現だ」
「人生はパフォーマンスだ」というのです。

今の若者たちは、「自分をどう表現するか」ということに大きな関心がありますから、これまた何か自分の能力を開花するために、いい仕事をしたいと思うのです。

高い「理念」があるのがエグゼクティブです。しかし、その理念を長々と話しても、部下に強いインパクトは伝わりません。むしろ「短くても強い名言クギ」を社内外で公表していくことが、今の社会に必要です。

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