オーケーでは牛乳でも納豆でもヨーグルトでも棚の奥に手を突っ込んでいる客はいない。私のように常連ではない客はそういった行動をとるけれど、いつも来ている客は絶対にやらない。

なぜなら、オーケーは牛乳などの商品の場合、前日に入荷したものが売り場に残っていたら3パーセント引きのシールを貼ってしまう。製造日が古い商品にはシールが貼ってあるから、わざわざ日付を調べたり、棚の奥に手を伸ばしたりはしないのである。さらにいえば、常連客は値段を調べて買ったりはしない。置いてあるものはどこの店よりも安いとわかっているから、値段を見ずに買っている。

店を信頼し、安心しきって買い物をしている。つまり、「安心」は客の行動に現れていた。

小売店におけるサービスとは頭を下げたり、丁寧な接客をしたり、微笑をたたえてもてなすことだけではない。客を安心させることがサービスの目的だ。オーケーの従業員は全員が愛想がいいとは言えない。しかし、売り場は客を裏切らない。

飯田と会った時のことを思い出した。

別れ際にひとつだけ確認したことがある。かなり失礼な質問だったけれど、話のついでに確かめたくて聞いてみた。

「飯田さんは客を裏切ったことはあるんですか? お客さんの信頼に応えなかったことはあるんですか?」

心外なという表情で、彼は即座に答えた。

「一度もない。いや、ないと思っています」

※この連載は『プロフェッショナルサービスマン』(野地秩嘉著、プレジデント社)からの抜粋です。

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(構成=プレジデント書籍編集部)